あぶくま抄・論説

あぶくま抄

歌姫の福島への思い(9月13日)

 開演時間になっても幕が開かない。五分遅れで前奏が流れ、力強い歌声が会場を包む。二曲歌い終えて、突然、声を詰まらせ涙を浮かべた。前日の公演で喉を痛め、開演するかを直前までスタッフと相談したことを打ち明けた。 福島市で八月下旬に開いたコンサートで、...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

会津と伊勢(9月12日)

 八十二歳になった新島八重が詠んだ。〈いくとせかみねにかかれる村雲のはれて嬉しきひかりをそ見る〉。一九二八(昭和三)年九月、会津藩主松平容保[かたもり]公の孫に当たる勢津子さまと昭和天皇の弟の秩父宮雍仁[やすひと]親王のご婚儀を祝した。 「朝敵」...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

もし夏目雅子さんが…(9月11日)

 まぶしいほどの輝きと、凛[りん]とした演技は今も色あせない。女優の夏目雅子さんが急性骨髄性白血病で亡くなり、十一日で三十三年となる。二十七歳だった。 九年間で十数本の映画に出演し、テレビでも活躍した。フランスの映画監督で作家の故クリス・マルケル...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

キューバ移住120年(9月9日)

 中米のカリブ海に浮かぶ島国にキューバがある。一八九八(明治三十一)年に日本人が初めて定住のため渡った。今年で百二十年になる。砂糖景気を背景に、本県出身者も海を越えた。 太平洋戦争中は親米政権の方針で約三百五十人の日系人が強制収容された。戦争が終...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

伊達地方の未来を織る(9月8日)

 伊達地方を北から眺めると、南北に四筋の太い線が見える。西から東北自動車道、JR東北新幹線、四号国道、阿武隈川。交差して東北中央自動車道「相馬福島道路」の建設が進む。これまでなかった東西の線が、くっきりと浮かぶ。 桑折高架橋(仮称)が八月末、桑折...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

克服できる力(9月7日)

 大きな災害がまたも日本列島を襲った。今度は北海道の人々を恐怖に陥れた。震度7の地震で、尊い命が奪われた。安否が分からない人もいる。「自然災害が多すぎないか」。誰もが感じている。 大規模な土砂崩れが建物を巻き込んだ。札幌市内は、地盤の液状化によっ...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

井戸沢断層(9月6日)

 いわき市田人町の山間部にある井戸沢(塩ノ平)断層は、震災の一カ月後に起きた巨大余震で地表に現れた。約十四キロにわたり、大地のずれが一直線に貫く。最大で二メートルほどの段差ができた。 地元は後世に伝える試みを続ける。毎年、イチョウの苗を植える。発...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

サンマとブレーキ(9月5日)

 作家吉村昭さんの小説「破船」に、家族四人が一匹のサンマを分け合って食べる夕げの場面がある。初めて漁に出た主人公の少年が苦心の末、ようやく得た。弟と妹はわずかな身を無心に口にする。少年は小さな魚がもたらす幸福感をかみしめる。 サンマ漁の最盛期が近...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

失敗の現場(9月4日)

 大熊町の中心部は人々の息遣いが、いまだに聞こえない。その中に県の旧原子力災害対策センター(オフサイトセンター)がひっそりと立つ。二〇二〇年までに取り壊されるという。 東京電力福島第一原発から五キロしか離れていない。事故直後、政府の現地対策本部が...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄

思慮(9月3日)

 福島市の「こむこむ」前に置かれた子どもの像が波紋を広げた。防護服姿で、胸に付く線量計を模した数値はゼロを示す。現代アート作品「サン・チャイルド」である。「さらなる風評を招く」「復興のシンボルになる」。賛否の声が相次いだ。 設置場所への疑問もあっ...[記事全文

カテゴリー:あぶくま抄