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【避難指示解除】状況踏まえた判断を(3月18日)

 東京電力福島第一原発事故に伴う南相馬市の避難指示解除準備、居住制限両区域について政府の原子力災害現地対策本部は4月中の解除の方針を示した。その後の説明会で出された市民の意見を踏まえ、桜井勝延市長は「4月中は厳しい」とずれ込む見通しを示している。
 安心できるレベルの除染を求める心情も理解できる。一方で4月当初の解除を期待して準備を重ねてきた住民の落胆も感じる。これまで積み重ねられたインフラ整備などの実績や準備宿泊などの状況を踏まえ、現実的な解除時期が判断されるべきと思う。
 そもそも、国直轄の生活圏の除染が解除目標前に余裕を持って終了しないことで、住民説明会は除染に関する不満、懸念にあふれ、解除後の住民生活の在り方など、前向きな議論にはならなかった。住民が心情的に受け入れられる日程で除染を終了できなかった国は批判されるべきだ。
 平成24年4月の警戒区域解除後、小高区など同市の20キロ圏内は立ち入りが自由となり、昨年末までに52事業所が再開している。
 多くの避難者が住む原町区や鹿島区から小高区の市街地までは車で数十分の距離だったこともあり、住民の古里への心理的距離は他の避難自治体より近いと感じる。
 特例宿泊を経て昨年8月から始まった準備宿泊の登録者数は増加傾向にある。3月15日現在、対象の3675世帯、1万1702人のうち572世帯(15.6%)、1710人(14.6%)が登録した。帰還への期待をうかがわせる数字だ。
 解除は新たな住民を呼び込むきっかけにもなる。第一原発の廃炉作業や、その周辺自治体の復興事業の進展によって、より近い場所に居住を望む関係者もいるだろう。
 被災地の再興には新しい住民の力も欠かせない。支援で訪れた土地になじみ、住み着く決断をした人の話を少なからず聞く。もとより相馬地方は江戸時代の大飢饉[ききん]の時代、北陸地方などから移民を受け入れた柔軟な土地柄だ。被災地を訪れるさまざまな人材と地元が真剣に議論し、時間をともにしていくことで新たな地での人生を選択してくれる人もいるはずだ。
 南相馬市の避難指示解除区域はこれまでの自治体の中で最も人口が多い。原発北側の自治体では初めてだ。住民の居住が自由になる場所の拡大は、より原発に近い自治体にとって心強い。解除によって、古里を取り戻そうという新たな勇気が生じることに期待したい。(佐久間 順)

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