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【復興庁の機能存続】対応が遅すぎる(3月23日)

 小欄でこれまでたびたび指摘してきた復興庁の福島移転について、政府は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から10年を経た平成33年4月以降の設置に向け議論する方針を示した。長期間にわたる原発事故対応を考慮した点は評価したい。ただ、十分に機能していない復興庁の現状を考えると動きが鈍いと言わざるを得ない。
 復興庁は復興庁設置法で、復興期間が終わる33年3月末までの廃止が規定されている。折り返しの5年が経過し、政府は機能存続を検討する方針を決めた。集中復興期間から復興・創生期間に切り替わる4月以降に議論を本格化させる。3年後を目標に、復興庁をどのような形で存続させるのかの方向性を判断するという。28年度からの政府の復興基本方針の見直し時期に合わせた。
 高木毅復興相は今後5年間、復興庁を現在の体制のまま維持するとした上で、原発事故の特殊事情を抱える県内をはじめ宮城、岩手両県の復興状況を確認しながら議論していく姿勢を示している。裏を返せば、今後5年間は組織の変更は考えていないと表明したことにほかならない。県内の避難市町村、県などの現場と危機感が共有できていれば、こうした悠長な対応とはならないはずだ。
 県内の避難区域が設定された市町村はすでに3市町村が帰還を開始している。南相馬市小高区と川俣町山木屋地区、葛尾村は春以降の避難指示解除に向けた最終調整に入っている。避難区域が大きく動く今こそ、現地に寄り添った組織が必要ではないか。与党内では、原発事故対応に特化した「福島復興庁」への衣替えの案が浮上しているというが、被災地の住民にとって5年後では遅すぎる。衣替えせずとも、体制の充実、強化は即刻実行すべきだろう。
 さらに、懸念材料がある。政府が決定した国機関の地方移転方針は、観光庁や中小企業庁など大半が移転を見送る方向となった。都道府県が要望したほとんどが実現せず、唯一移転の方向性を示したのは京都に移る文化庁だけだ。東京一極集中是正には到底、影響を及ぼさない、腰砕けの内容となっている。
 復興庁の役割は緊急性と地域への影響といった視点からすると、観光庁などの移転とは全く質を異とする。被災地と距離、意識とも近ければ近いだけ、復興をけん引する力になるはずだ。両者を同じ尺度で見ているとは思いたくないが、政府、与党は機能存続の意義をもう一度、確認すべきだ。(安斎 康史)

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