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バクチ場が成長戦略とは(12月25日)

 カジノは平たく言えばバクチ場である。これを解禁する「総合型リゾート施設(IR)整備推進法」なるものが成立した。自民党と日本維新の会が数の力で、まともな審議もないまま、押し切ってしまった。
 パチンコ、パチスロ、競馬などの深みにはまるギャンブル依存症。家庭崩壊に陥る悲惨なケース、横領など悪事に手を染める事件もしばしば報道されている。そこに新たな賭場を増やす。ただでさえ日本人はギャンブル依存症になりやすいといわれている。国民の不幸を増幅しかねない温床を作るものではないのか。
 こうしたさまざまな懸念に加え、一番の問題は「カジノは成長戦略の目玉になる」と公言する安倍晋三首相の発想だ。IR法は議員立法として成立したものだが、推進した「国際観光産業議員連盟」で首相はかつて最高顧問だったことでも分かる通り、旗振り役を果たしてきた。
 依存症や暴力団の介入を防ぐ対策をとるというが、バクチを成長戦略の目玉にすること自体、筋が悪すぎる。政策以前の問題である。首相や議員連盟は、カジノはホテルやレストラン、国際会議場、ショッピングセンターを併設したリゾート施設の中に設ける。2020年の東京五輪に合わせて開業すれば、訪日外国人の増加が見込めるという。
 その経済効果は建設費や周辺のインフラ整備を含め7兆円を超え、雇用も生まれると試算している。日本周辺には韓国、台湾、シンガポール、マカオといったカジノ先進国がめじろ押し。いまさらカジノ目当てに外国人客が大挙して来日するものだろうか。
 バクチは創造的な価値を生み出す要素はない。カジノはなくとも、訪日外国人客は毎年順調に伸び今年は既に2000万人を突破した。日本の自然、伝統文化、世界的ブームの和食、心のこもったおもてなし。治安の良さが加わり、安全に日本を満喫できる環境だからだろう。この魅力に磨きをかけること。それが政策の本筋である。
 カジノ解禁が急に動きだしたのは11月18日の首相とトランプ次期米大統領との会談から。トランプ氏は会談直後、来年1月20日就任すれば、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を正式表明した。
 TPPはアベノミクスの成長戦略の重要な柱と位置付けられ、国内における経済効果は14兆円に上ると試算してきた。国会で強行採決によりTPP協定の承認を取り付けたものの、トランプ氏の言明で協定発効は困難になった。
 アベノミクスの柱が折れてしまった。それで急きょカジノを持ち出してきたのではないか。金融の異次元緩和、財政出動に続くアベノミクスの目標は、成長戦略だとしている。その目玉がカジノというのでは、なんともいかがわしい限りである。(国分俊英、元共同通信社編集局長、本宮市出身)

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