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【高野病院】被災地医療、どう支える(1月6日)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後、避難せずに広野町で診療を続けてきた高野病院が院長の急死で非常事態にある。内堀雅雄知事は4日の年頭会見で、院長のこれまでの地域医療に対する貢献に言及しながら医師確保に向け支援する考えを示した。被災地の医療は多くの善意と志によって支えられてきたが、次の段階へ進むべき時期ではないか。高野病院への対応はその試金石となる。常勤医確保はもちろん、今後、被災地で安定した医療を提供するための方策を国、県、関係機関が構築してほしい。
 高野病院には震災時、100人を超す入院患者がいた。原発事故で住民は避難したが、患者の病状悪化を考慮して避難しないと決断。その後も双葉郡唯一の病院として診療を続けてきた。これを可能にしていた柱が、昨年末の火災で亡くなった高野英男院長だ。
 ただ一人の常勤医師だった院長は81歳。精神科医だが内科も、コンピューター断層撮影装置(CT)検査もこなした。非常勤医師はいたが自身は病院敷地内に居住し、100人超の入院患者に目を配りながら週数回の当直も務めた。院長の働きぶりを「超人的」と表現する医師もいる。
 緊急事態に対応し、南相馬市立総合病院の医師有志らによる「高野病院を支援する会」の呼び掛けによって、応援の医師が集まりつつある。町が交通費と宿泊費を負担する方向という。
 県は常勤医確保を支援する考えだが、単に後任院長となる常勤医1人を充てただけでは、高野院長の「超人的」努力でようやく保たれてきた医療や経営のレベルを維持できないという声も聞く。善意に頼らなくても成り立つ地域医療が被災地に求められる。
 高野病院には看護師の雇用助成など国、県の支援策はあるが、地域の医療計画や診療報酬制度の原則は「平等」を優先し、特殊な災害の中で医療を支えてきた病院の「特別扱い」を許していない。国は厚生労働省に特別チームを作り被災地での医療福祉の在り方を検討している。実のある方向性を示してほしい。
 高野病院を運営する医療法人、福島医大、国、県、町、双葉郡医師会は6日、今後の医療体制の確保に向け緊急対策会議を開く。会議が当面の対処にとどまらず、中長期的な地域医療の在り方まで協議する場となるべきだ。
 「民間」であることを理由に支援が中途半端に終われば、被災地医療を支えてきた他の民間病院や診療所は落胆するだろう。迅速かつ建設的な対応を望む。(佐久間順)

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