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北風の恵み(1月7日)

 北風の吹く日が多くなった。いわき市の魚店の軒先では干物が揺れる。ヤナギガレイ、メヒカリ、ドンコ…。柔らかい日差しと冷たく乾いた風を浴び、うまみを蓄える。
 原発事故で港町の冬の風景は一時、姿を消した。屋外で製造する干物は放射性物質の影響が懸念された。ある老舗は乾燥機を導入し、室内での生産に切り替えた。全国から新鮮な魚を仕入れ、乾燥時間やだしへの漬け時間を調整し、本来の味に近づけた。震災から5年半余りが過ぎ、その店も今季、天日干しを復活させた。
 江戸時代の元治元(1864)年、同志社大創立者の新島襄は函館への船旅の途中、いわきの干物文化に触れた。「函楯[はこだて]紀行」に、こう記す。〈海辺に比目魚[ひらめ]、魴●[ほうぼう]等を乾す事、甚し。是れ干物になし、四方へ運する由〉。海の幸に恵まれた、いわきには水産物加工という産業が芽生えた。鮮魚に比べ日持ちし、当時も中通りまで流通していたという。
 きょう7日は七草がゆだ。おせち料理で疲れた胃を回復させるためとはいえ、野菜だけでは物足りなさを感じる人も多いだろう。干物があれば満足感は上がる。魚を食べる健康効果はさておいても香ばしさがたまらない。

※●は魚ヘンに沸のツクリ

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