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就職最前線(1月8日)

 全国各地の校友会に出席すると「郡山への進学を勧めたが、卒業しても地元に戻ってこない」とOBから指摘される。都市の規模に大小の差はあっても「地方都市に若者が定着しない」「大学卒業後、地元に戻る若者が少ない」という悩みは全国共通である。
 同様の悩みを抱える地方自治体の多くが、Iターン・Uターン就職と称し、その対策に努めている。Iターンとは、卒業後の学生が出身地に戻ることなくある地域(地元)に就職すること。Uターンとは、地元出身学生が卒業後に地元へ戻ることだ。
 いずれにしても地方都市の活性化と発展には若者の力が必要だ。工学系大学にあっては、地域産業振興の担い手となる若いエンジニアとして地元企業に就職するよう促す施策を考える必要がある。
 大学生の就職活動について父母には次のように伝えている。
 「最近ではカタカナ表記の企業名が多くなるなど、企業名からは職域が読み取れない。また、異分野の企業と思われる場合でも、エンジニアが活躍する部署が隠れている」。-だから活躍の場を提供できる異分野も含む企業が優れたエンジニアの求人にやってくる。
 「業界では評価が高くても、一般には知られていない企業がある。さらに企業規模だけでその安定性・将来性を評価することはできない」。-つまり社名や規模の大小のみで企業評価はできない。
 「これからの社会に貢献するエンジニアとして活躍できる場所はさまざまなところにあります。就職活動に関しては、ご父母の皆さまの経験を踏まえて、ぜひ十分な企業研究をお願いしたい」
 つまり、学生諸君や父母に訴えたいのは企業研究の重要性なのだ。例えば製パン会社の求人なら「工学を学んだのにどうしてパンを作らなきゃいけないの?」となってしまう。しかし、求人内容は工場施設の設計やその維持管理だ。
 学生の多くは企業名に自分自身が学ぶ専門分野の名称を探す。これは彼らが専門技術者としての自負心を持っていることを意味する。従ってカタカナ社名や他分野と思われる企業からの求人には、興味が向く優先順位は低くなる。
 そこで求人側は彼らの専門性が必要であり、専門家としての活躍の場があることを明確に、積極的に伝えることが重要となる。
 一方、例えば大都市と地方都市、大企業と中小企業を見れば、前者に比べて後者は劣るという価値観があるのでないだろうか。そのような若者の価値観は、これまでの社会環境が醸成したものだ。地方都市を活性化させるためには、このような価値観の転換を図る必要があると考えている。
 さまざまな人々がこの地を生活拠点とし、笑顔あふれる交流がある。魅力ある生き方や豊かさの価値観とは何か、なぜ人々が笑顔で暮らしていけるのかを若者に伝えなければならない。地方の産業振興のためには金融機関も含めた産官学金の連携が重要と言われる。その前に、それを可能にする若者獲得のための産官学金連携の取り組みが必要だ。(出村克宣、日大工学部長)

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