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【成人の日】新しい古里の担い手に(1月9日)

 胸にどんな決意を刻んだのか。瞳にはどんな未来が映っているのだろうか。県内の多くの市町村で成人式が行われた。大きな責任への緊張と社会の一員としての自覚が表情ににじむ。新たな古里づくりへ、心強い仲間が育っていることを喜びたい。
 今年の成人式出席予定者は約2万200人。県外から帰省し、同窓生と晴れやかに式に臨む姿もあった。約5年10カ月前、中学2年生を終えて3年生になる前に東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きた。避難など大きな困難の中、苦労を糧に進学や就職をし、一歩ずつ大人への階段を上ってきた。本当によく頑張ってくれた-。家族の偽らざる思いだろう。
 昨年の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、未成年が政治参加できるようになった。新成人も当時初めて投票所に足を運び、1票の感触を確かめた。選挙期間中には、新聞を開いて政見に理解を深める姿も見られた。成人年齢そのものを18歳に引き下げる議論もあり、若い世代の社会参加が拡大する流れは強まっている。
 社会全体の高齢化が進み、憲法改正も論議される中で、未来をつくる若者一人一人の意見はますます重みを増す。インターネットやスマートフォンを使いこなし、世界中の仲間とつながりを築ける世代だ。物事に対するさまざまな見方を尊重しながら、存分に羽ばたいてほしい。
 社会の担い手として活躍の場が広がるにつれ、周りの見る目も違ってくる。
 <そんな父が突然変わったのは、成人式を迎えてからだった><突然、友人のような口の利き方になった>
 NHKアナウンサーの有働由美子さんは著書「ウドウロク」で回顧する。怒るとこの世のものとは思えないほど怖かったという父親は、娘が20歳を迎えるまでは厳格な存在でいようと思っていたのだろう。立派に大人になった娘に冗談を言ったり、おどけてみせたりするようになった。最近は、<もっと運動して><お酒を控えて>など、娘の方が口うるさく文句をつけるようになった-とつづる。
 自分のことを考えるだけでなく、他人を思いやれることが大人の大事な条件だ。時には厳しい言葉に耳を傾け、強く、優しいふくしま人になってほしい。有働さんが自分を励ますために読むという茨木のり子さんの詩がある。
 <駄目なことの一切を/時代のせいにはするな/わずかに光る尊厳の放棄><自分の感受性くらい/自分で守れ/ばかものよ>(佐藤克也)

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