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【農林水産業支援】新たな発想が必要だ(2月16日)

 政府が県内の帰還困難区域の環境整備と被災事業者の生業[なりわい]の再生などを柱とした福島復興再生特措法の改正案を閣議決定した。県産農林水産物の風評対策が盛り込まれ、平成29年度当初予算案に事業費として47億円が盛り込まれる見通しだが、想定されている取り組みには首をひねらざるを得ない。新たな発想が必要だ。
 生業の再生に農林水産業関係の取り組みが改めて位置付けられたこと自体は評価したい。これまで復興政策は福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の推進や官民合同チームによる地元事業者支援など新産業の創出や商工業の再生に力点が置かれていた印象を受ける。農林水産業は県内の基幹産業の一つであり、妥当な判断だろう。
 気になるのは「風評対策」の中身だ。生産段階でのチェックを充実させ、流通段階で風評の実態調査を行う。販売段階では量販店への販売コーナーの設置、ポイントキャンペーンなどを後押しするという。目新しさはなく、何をいまさらという感じだ。確かに首都圏など大消費地に向けた既存の流通ルートの維持は農林水産業者の安定経営には欠かせない。ただ、現状を踏まえれば、それだけで十分とはいえまい。
 「規格外でも需要はある」「地元の需要は地元でまかなう」「顔が見えれば風評は払拭[ふっしょく]できる」…。「3・11」後、県内では業種の垣根を越え、新たな発想で独自に農産物の販路を切り開く人たちが出てきている。それぞれ結果も出している。
 流通ルートの複線化は風評による価格や出荷量の落ち込みを補填[ほてん]するための有効な手段になるはずだ。こうした取り組みが「もうかる農林水産業」のビジネスモデルとして確立できれば、県内だけでなく全国の人口減に悩む地方の活性化や若者の移住・定住にもつながるのではないか。
 特措法の改正により体制強化が図られる官民合同チームの役割は重要だ。これまでも農家の営農再開支援などに当たってきたが、今後は新たな視点で販路開拓に挑む人たちをすくい上げ、業種の壁を越えるための仲立ちやノウハウの提供、資金面のバックアップなどに力を入れるべきだ。
 既存施策である農商工連携や六次産業化はうまくいっているとは言い難い。相変わらずの縦割りで省庁間の連携がとれないためとの指摘を耳にする。被災地での取り組みは待ったなしであり、結果も求められる。「お役所仕事」は許されない。(早川正也)

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