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【帰還困難の道路】線から面への復旧を(2月17日)

 東京電力福島第一原発事故で設定された帰還困難区域で県が進めている主要道路の復旧工事の大部分が、3月末までに終わる見通しとなった。町村が帰還困難区域内に設ける特定復興拠点に欠かせない基盤である道の前倒し事業完了を歓迎したい。まだ定まっていない帰還困難区域の方向性を決める意味でも、復旧する主要道路の今後の活用に注目が集まる。
 114号、288号、399号、459号の4国道と6つの県道の10路線39カ所が復旧作業の対象となっている。東日本大震災の揺れで路肩が崩落したり、路面がひび割れるなどした場所の復旧は平成27年度に9カ所、28年度に23カ所で終える予定だった。29年度まで事業が続く浪江町室原の114号国道トンネル入り口の山林崩落防止対策を除き、前倒しの6カ所を含む38カ所で完了する。
 国の直轄除染が順調で、工事の延長が比較的短い区間だったために前倒しが可能になったという。復旧した道路は許可が必要で、誰でも自由に通行できるわけではないが、帰還困難区域内への墓参など一時立ち入りの際に通行できるようになる。
 重要なのは、復旧した道路が福島復興再生特措法改正案に盛り込まれた特定復興拠点整備に大きな役割を果たす点だろう。復興拠点は法改正後、市町村長が計画を作り、国の認定を受ける。現段階の想定では、浪江町は苅野、大堀、津島の3カ所に復興拠点を設けたい意向だが、114号国道、県道落合浪江線の復旧によって障害が取り除かれる。双葉町が計画するJR双葉駅西側は県道井手長塚線の復旧で安心感が増す。
 避難区域では、避難指示解除準備と居住制限の両区域の避難解除が続いている。一方で、帰還困難区域は面的な対応を含め不透明な部分が多い。主要道路や復興拠点の整備が予定されている地域、一部農地で除染が行われているほかは、面としての広がりには至っていない。
 特定復興拠点でさえも除染によって避難指示解除の基準となる放射線量まで低下する期間をおおむね5年と見積もっている。帰還困難区域の避難指示解除には、長い時間が必要なのは十分に理解できる。今回の道路復旧の完了は、線としての人の流れをつくるきっかけとなるはずだ。この線を面としてどう広げていくか。地元や県は帰還困難区域の環境再生や生活再建に向け、今からその可能性を探る準備を整えておくべきではないだろうか。(安斎康史)

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