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【除染汚職】管理監督体制の検証を(3月4日)

 東京電力福島第一原発事故に伴う国の除染事業で、業者から接待を受けたとする収賄容疑で環境省福島環境再生事務所の専門官が逮捕された。事実であれば、避難者の気持ちを踏みにじる行為だ。職員の管理・監督体制を厳しく検証し、再発防止を徹底するよう求めたい。
 県警と警視庁の合同捜査本部によると、専門官は富山県の土木建築会社の元社長から旅行費や飲食費など計二十数万円相当の接待を受けた疑いが持たれている。浪江町での除染事業で、土木建築会社が受注できるよう元請けなどに口利きをして便宜を図った見返りという。
 除染は住民帰還の環境づくりの根幹だ。避難指示の解除日決定に向けた住民懇談会では再除染を訴える切実な声も上がっている。その陰で事業を食い物にし、甘い接待を受けていたとするなら、避難自治体や避難者の怒りや不信感は収まるまい。
 除染事業を巡り、環境省は平成28年度までに総額約2兆6千億円もの予算を計上している。特殊な技術がなくても比較的容易に受注できることもあり、多くの業者が参入している。一方で、受注形態は元請けから1次、2次、3次下請けと重層化し、実態が見えにくい構造下で手抜き除染や暴力団介入などの問題も取り沙汰されてきた。
 環境省は元請け会社に対し、下請けを含めた除染作業員の管理を徹底するよう指導している。そうした中、作業を監督する立場の専門官が汚職に手を染めていたとすれば示しがつくまい。
 福島環境再生事務所に所属している専門官は193人で、いずれも任期付きの国家公務員だ。書類審査と面接によって退職公務員や民間などから採用している。公務員経験者なら利害関係者との適切な接触の在り方を心得ているはずだ。民間出身のこの専門官は公務員の倫理規定をどの程度心に留めていたのか。
 以前は電気設備関係の仕事に従事し、除染関係も手掛けていたという。現場が分かる除染経験者として監督業務に向いているとは言える半面、現場経験が逆に業者との癒着につながってはいなかったか。今回の事件は氷山の一角だ-との声も聞く。疑念を晴らすには環境省が自らきちんと調査する必要もある。
 再び同様の問題が起きれば、巨額の国費が投入される除染事業への理解や信頼は大きく揺らぐ。原発事故から間もなく丸6年を迎える中、意識に緩みが生じていないかも職員一人一人が突き詰めて考えてほしい。(五十嵐稔)

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