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【いわきの沿岸部】進む復興さらに加速を(3月9日)

 東日本大震災から6年を経て、いわき市の沿岸部は復興の姿が見えるようになってきた。津波被災地を中心にした防潮堤整備は新年度にも完了する。高台への集団移転や土地区画整理事業による宅地の引き渡しが進む。新たな道路や施設などにより活気づく期待も膨らむ。水産業や観光業の再生などの課題はあるが、沿岸部の特長と可能性を伸ばせる取り組みを望みたい。
 被災地では防潮堤のかさ上げなどとともに、宅地や道路・水路などが整備され、再び街を形成する基盤ができた。久之浜町は土地区画整理によって2月末までに引き渡された宅地152区画のうち、4分の1近くで住宅などが建ち始めた。昨年は防災機能と交流施設を兼ねた市の支所が開所している。4月には複数の飲食店と生鮮食料品店、美容室などが入る商業施設も誕生し、利便性が増す。
 先月26日に開通した6号国道久之浜バイパスは、再生が進む市街地に面した国道から離れた高台を通る。渋滞の解消などが期待される半面、市街地からにぎわいが遠のくことを心配する声もある。バイパスは海を見下ろす景観の評判がいい。今後、市街地への動線を含め活性化につながる対応が求められる。
 いわきの魅力は、やはり海だ。沿岸部の再生なくしては復興の印象は半減する。その意味で今夏の薄磯海水浴場の再開は朗報だ。震災前、市内で最多の入り込み客があり、夏の観光の要だった。津波で南隣の豊間地区とともに甚大な被害を受けた。かつて民宿や水産業で栄えた地域が、すぐに元通りになるとは思えない。それでも一歩ずつ生業を取り戻そうとする人々の努力を後押しすることは大切だ。
 市は津波被災地での事業再開や雇用を促進する奨励金制度などを設けている。さらに実態に応じた制度の拡充・見直しを図ってほしい。企業などには被災地支援として、地元の民宿、スポーツ施設などを社員の福利厚生に利用することも考えてもらいたい。
 新年度、市は震災メモリアル施設を薄磯地区に整備する計画だ。できれば単なる資料館ではなく、苦難に立ち向かう気持ちを高めるような工夫がほしい。避難所や仮設住宅で聞いて励まされた音楽、郷土愛を感じる映像などを生かすのも一考に値する。
 地元には航海を見守る塩屋埼灯台がそびえ、美空ひばりさんが歌った「みだれ髪」の碑が立つ。アクアマリンふくしまがある小名浜港、道の駅よつくら港などとも結ぶ通年型観光ルートに新たな魅力を加えたい。(浅倉哲也)

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