あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【震災・原発事故6年】これからが正念場だ(3月11日)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故という未曽有の複合災害が発生してから丸6年が経過した。県内のほとんどの地域では日常を取り戻しているが、8万人近くに上る避難者の生活再建や避難区域の再生、廃炉をはじめとする原発事故の後始末など課題は依然、山積している。再生・復興は、これからが正念場だ。
 今、最も大切なのは、改めて被災地・被災者の立場で現状を見ることだろう。避難者数一つとっても「ピーク時の半分になった」とみるか、「いまだに8万人もが不自由な生活を強いられている」と捉えるかでは大違いだ。基準値超の放射性物質が検出される農作物や魚介類はゼロになったとはいえ、販路が閉ざされたままでは農家や漁師の生活は成り立たない。明るい材料は前向きに受け止めるとしても、その先にある人々の生活を重ね合わせないと現状を見誤る。
 各地で進められている復旧・復興政策も同様だ。「3・11」以降、国は被災地向けにさまざまな施策を打ち出してきた。ただ、本紙連載「復興を問う」などからは政策・制度が実態に追い付いていなかったり、現実との間にズレが生じていたりする様子がうかがえる。被災地や被災者の状況は年を追うごとに複雑化している。縦割りや前例踏襲の取り組みでは対応が難しい場面も少なくない。政策・制度の不断の検証と見直しは欠かせない。
 被災地や被災者に今、どのような問題や課題が生じ、何が求められているのかをまずは見極める。そこから政策・制度を組み立て直し、発災当初に描いた復興の青写真との整合を図る。いわば「ボトムアップ」型の手法が重要だ。その際、もちろん現場が最優先されるべきであり、「青写真」の見直しもちゅうちょしてはならない。
 震災と原発事故は被災地の時間を20年先に進めたといわれている。人口減、少子高齢化、産業の衰退、医療・福祉の維持・確保の難しさ…。全国の市町村もいずれ一連の課題への対応を迫られる。福島の復興は被災によるマイナスをゼロに戻すだけの取り組みでは不十分であり、地方を再生させるモデルにするとの気構えを持つべきだ。
 「あの日」多くの命を失った。その後も古里に思いを募らせながら大勢の人が亡くなっている。それぞれの地域を再生し、全国に誇れる県土を実現する。それが残されたわれわれの責務であることを胸に刻み、午後2時46分を迎えたい。(早川正也)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧