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【東電廃炉作業】丁寧な情報発信を(3月13日)

 東京電力福島第一原発1号機が水素爆発を起こし、広範囲に放射性物質を放出した日から12日で丸6年となった。福島第一原発では、1号機から3号機までの溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しに向けた作業が続いている。放射線、汚染水などとの長い闘いは、まだ先が見通せない状況といえる。
 ロボットを投入するなどして原子炉内の状況が少しずつだが、分かってきた。こうした中、2号機の調査で思いがけない風評が広まった。2号機は燃料デブリが圧力容器を破って格納容器の底部に落ちたとみられている。今年に入ってからのロボットによる調査で、格納容器内の放射線量は最大毎時650シーベルトと推定された。その後に投入したサソリ型ロボットによる格納容器内の実測値は毎時210シーベルトを記録した。
 東電によると、通常の原発では、原子炉停止から1日後の燃料集合体の表面線量は毎時数万シーベルト、使用済み核燃料の5年冷却後の表面線量は毎時数百シーベルトになるという。単純な比較はできないが、関係者にとっては2号機の調査の過程で高い放射線量が観測されるのは、ある程度予測できた。
 ところが、新たな事実が明らかになると、数値だけが一人歩きし始めた。インターネットの海外英文ニュースサイトは、第一原発の建屋周辺などの観測結果が最近になって上昇したように読める記事を掲載した。中国や韓国からの観光客が、日本訪問をためらったケースもあったという。実際は、高い放射線量は建屋内の限られた部分の数値で、原発構内の9割近い現場は、簡易な作業服姿が日常となっている。
 内堀雅雄知事は震災と原発事故から6年を前にした本紙インタビューで、「海外では周辺環境に影響を及ぼしているかのような事実と異なる報道があった。誤解を呼ばないよう、より正確、丁寧に情報発信していく必要がある」と東電に求めた。今後も新たな事実を公表する機会は増えてくるだろう。予想外の風評を起こさないためにも、正しい情報を的確に、分かりやすく発信してもらいたい。
 原発事故で設定された避難区域は全ての帰還困難区域と双葉、大熊両町の居住制限区域、避難指示解除準備区域を除いて4月1日までに解除される。解除市町村には徐々に人が戻り、復興に向けた取り組みが進む。国内外ばかりでなく、帰還者や古里に戻ろうとする住民に不安を与えないよう情報発信には細心の注意が必要だ。(安斎康史)

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