あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【多世代同居と近居】緩やかな家族関係を(3月17日)

 親世代と子世代が子育てなどで助け合う暮らし方を、県や一部の自治体が応援し始めている。同居や、親の近くに住む「近居」のための住宅取得や増改築の費用などの一部を助成する。出生率向上につなげるとともに、若い世代による高齢者の見守り・介護などを期待している。行政側の狙いは分かるが、子育てや介護は今は「社会全体で」の流れだ。ただ、家族形態としてはいい面がある。良いとこ取りで、緩やかにつながっている家族関係が望ましいのではないだろうか。
 県の制度は、多世代が同居や近居を始めるための住居取得や増改築の費用の一部を助成する。最大110万円で、平成28年度に設けた。東京電力福島第一原発事故の影響で、ばらばらになった家族が再び一緒になるための支援の意味もある。中古住宅市場の活性化にもつなげたい考えだ。29年度は予算額を増やす。同居や近居を予定していた人は歓迎するだろう。
 福島市は県事業との相乗効果を図るため、県の助成を受けて市内に住むことになる人に対して、独自の補助金を上乗せする。条件や助成対象は異なるが、二本松市や白河市などでも似た趣旨の事業を行う。いずれも地域に若い子育て世帯を呼び寄せる施策になり、うまくいけばバランスの取れた人口構成も望める。
 さらに県は29年度、多世代同居・近居による不動産取得税を減免する。減免額の上限は30万円。全国的でも先駆的な取り組みのようだ。
 県は近居を2キロ以内に住み合うこととする。長所が多く、同居より好まれる。互いの生活へ干渉が少なく、家族の摩擦が生じにくい。いざというときの安心感が得られ、頼り合える関係でいられる。共働き夫婦は理想的な子育て環境をつくりやすい。とはいえ、60歳を過ぎても働く祖父母が多くなり、全てが子育ての戦力になるとは限らない。
 親と同居や近居をしていても、子どもは親の様子をそっと気に掛けていればいい。介護が必要になったときも柔軟に対応したい。専門職に任せた方がいい場合もある。近年、親の介護と育児を同時に行う「ダブルケア」や介護離職が問題となっており、その負担は女性に偏る。同居・近居に踏み切ったものの、女性の就労を困難にしてしまうようではいけない。
 希望があっても居住関係を変えるのは容易ではない。思い切った助成額を用意したり、雇用確保に一層力を入れたりして、他県に住む人も古里で同居や近居をできるようにしたい。(多田勢子)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧