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【原発避難賠償判決】人災認めた意義大きい(3月18日)

 東京電力福島第一原発事故の影響で福島県から群馬県などに避難した住民らが、東電と国に損害賠償を求めた訴訟の判決で前橋地裁が17日、津波対策で両者に過失があったとして賠償を命じた。事業者である東電が対策を怠り、規制権限のある国が責務を果たさなかったとして、裁判所が原発事故を人災と認めた意義は大きい。県民全てが被災者とも言える本県にとって当然と感じる判決だ。
 全国の避難者らによる約30件の同種集団訴訟で最初の判決であり、今後の判断にも影響を与えるとみられる。
 判決は政府の地震調査研究推進本部が平成14年にまとめた長期評価で事故の予見が可能となり、20年には東電が実際に予見していたと指摘。特別な許可で扱う原子力事業者の責任があるにもかかわらず、経済的合理性を安全性に優先させたとして「特に非難に値する」と批判した。
 国に対しても、東電が長期にわたり自発的対応に動かないのを認識しながら、規制権限を行使しなかったのは著しく合理性を欠くと指摘。責任も事業者である東電に比べて補充的ではなく同等と見て、慰謝料額を同額とした。
 原発事故を巡って国際原子力機関(IAEA)は平成27年に公表した報告書で、東電や国は巨大津波の危険を認識しながら実効的な対策を怠ったと総括した。その他の調査や研究でも、東電などは北海道南西沖地震やスマトラ沖地震の津波被害などから、従来の想定を超えた津波が日本の原発を襲う可能性があり、過酷事故につながる可能性を認識していたという指摘が出されている。
 危険性を認識しながら縦割りの組織は安全に関する情報や対応を共有せず、面倒な意思決定を先送りし、立地地域の住民の安全より経済的合理性を優先させた。こうした判断や対応は事業者と国がなれ合いの構図だったからだろう。強く反省するべきだ。
 原発事故の刑事責任については告訴・告発された東電元会長らを東京地検が二度、不起訴処分としたが昨年2月、強制起訴されている。刑事責任立証のハードルは高いが、危険を知りながら放置していた責任は今後も追及されなければならない。
 判決は原告の生活場所の選択など自己決定権を含む「平穏生活権」を認めた。裁判長らが県内にある原告の自宅を訪れ、原発事故の現場を直接、目にした経験は大きな判断材料になったはずだ。こうした当然の権利の侵害を県外の人々にも知ってもらわなければならない。(佐久間順)

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