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【避難区域縮小】古里創生の出発点に(4月1日)

 富岡、浪江、飯舘3町村と川俣町山木屋地区の居住制限、避難指示解除準備両区域の解除に伴い避難区域は平成25年の再編時の3分の1に縮小した。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興は新たな段階に入る。6年余に及ぶ避難を余儀なくされた中、地域を立て直し、より豊かな郷土にしていく道は決して平たんではないだろう。これからが本当の正念場とも言える。
 それにしても広範囲な地域が立ち入り禁止となり、16万人を超す住民が避難していた原発事故直後を振り返ると、関係者の感慨はひとしおに違いない。解除日を巡る説明会では、政府と住民の間で激しい議論が繰り返された。「除染が不十分だ」「まだ暮らせる環境ではない」などの懸念に応え、各町村は政府と交渉を重ねた。課題はあるものの、解除を受け入れたのは豊かな郷土を取り戻し、次の世代に受け継ごうとする決意の表れに他ならない。
 既に避難指示が解除された地域の帰還率は、数字で見る限りは高いと言えない所もある。それでも帰還した住民が一人でもいれば、地域を前へ動かす原動力になる。避難したままの人でも、古里との絆があれば復興への後押しができる。ただ、復興への思いはあっても避難を長く強いられた地域を住民の自力だけで再建できるはずはない。
 複数の避難区域を同時期に解除する国の方針に対しては、復興の実績づくりを急ぎ、自らの責任や負担をなくす狙いがあるのではとの受け止め方が広がった。町村長からは解除後の取り組みこそが最も重要になるとの指摘も出ている。国はこうした声に真摯[しんし]に向き合い、共に正念場にあるという意識を持って支援を継続・強化するべきだ。帰還困難区域の再生にも全力を注ぐ必要がある。
 人口の流出が進んだ地域をどう維持、再建するかは県内市町村共通の課題でもある。広い県内には優れた物づくりの技が各地にある。豊かな自然や伝統という郷土の資源を生かした地場産業も根付いている。県全体を見据えた復興を進める上で、解除区域と各地の産業が連携し合える仕組みづくりも進めてほしい。
 内堀雅雄知事は先の定例会見で福島ならではの強みを生かし、攻めの姿勢で復興と地方創生を前進させると述べた。未曽有の災禍に遭っても県民は負けずに乗り越えてきた。新年度が始まり、復興・創生期間は2年目を迎えた。一人一人の力で挑戦を続け、活力ある郷土を築く新たな出発点にしたい。(五十嵐稔)

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