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【憲法施行70年】平和主義を考える(5月3日)

 きょう3日は「憲法記念日」だ。昭和22(1947)年に施行された日本国憲法は70年という節目を迎えた。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を3大原則とし、国の仕組みや人々の生活の根幹をなす最高法規となっている。憲法学者の渋谷秀樹さんは著書「憲法への招待」(岩波新書)で憲法を空気に例える。普段、憲法の存在を気に留めることはないが「はっきりと姿を現してくるのは、個人の生命や自由が危機に陥ったとき」と説く。第9条を巡る憲法改正論議を聞き、不安を感じる人は少なくないだろう。平和主義について改めて考える日にしたい。
 太平洋戦争で連合国軍と戦っていた政府は20(1945)年8月にポツダム宣言を受諾し、無条件降伏した。平和国家実現を目的の一つに、新たな憲法をつくった。前文には「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」と記し、「日本国民は、恒久の平和を念願し…」とつづる。その理念を反映させた9条は戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認をうたうが、その後の国際情勢の変化に伴い、自衛隊が発足した。条文の解釈は現在もさまざまに分かれる。
 平成27年9月には集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法が成立した。改憲に賛同する勢力は衆参両院で発議に必要な3分の2以上の議席を占める。しかし、共同通信社が実施した世論調査では改憲派60%、護憲派37%ながら、安倍晋三首相の下での改憲には51%が反対し、賛成は45%だった。戦後、海外で武力行使しなかった理由を「9条があったから」とする回答は75%に上った。一方で、9条改正が必要は49%、必要なしは47%。賛否は拮抗[きっこう]するが、9条の理念が人々に浸透している結果と見える。改憲派は「条文や内容が時代に合わない」「新たな権利や義務を盛り込む必要がある」、護憲派は「戦争放棄を掲げ、平和が保たれている」「改正すれば軍備拡張につながる恐れがある」と理由を挙げる。それぞれ理にかなっている。改憲は今、本当に求められているのか。政治家のみならず国民一人一人が幅広く真剣に論議する時が訪れた。
 東京都の国立公文書館は7日まで特別展「誕生 日本国憲法」を開いている。憲法の原本などが展示され、70年前に平和国家実現を目指した関係者の努力が垣間見られる。朝鮮半島情勢の緊迫化が伝えられる折、会場に足を運べば平和主義の意義に触れる機会となる。(川原田秀樹)

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