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透析治療不安募る 国、人材確保地元任せ

 「これ以上、透析患者が増えれば対応できなくなる」。南相馬市の担当者は表情を曇らせる。相馬地方の患者約10人が通院している宮城県内の病院が新規の受け入れはできないと伝えてきたためだ。
 相馬地方では東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後、医師、看護師不足を背景に透析治療を巡る新たな課題が浮上している。

 浜通りをはじめとする震災の被災地では人工透析を受ける患者が年々増えている。福島医大の関係者は避難生活の長期化により、糖尿病などを患う人が増加している事情が背景にあるとみている。
 相馬地方では相馬市の公立相馬総合、相馬中央と南相馬市の小野田、大町の4病院が人工透析を担ってきた。震災前から200人程度を受け入れる体制が整い、地域内で治療が完結できていた。しかし、震災後は人工透析を受ける人が増加し、相馬地方の患者の一部が宮城県内に通院するようになった。
 相双地方の病院の医師数は昨年末時点で88人、看護師数は711人で、震災が起きた23年3月に比べて3、4割ほど減っている。ぎりぎりの人員で透析患者を受け入れる体制を維持しているのが現状だ。ある病院の担当者は「透析治療には医師、看護師らがチームを組んで対応する必要がある。患者の受け入れを増やすには、さらに多くの人手を確保しなければならない」と指摘する。医師、看護師不足が全国的な課題となる中、透析スタッフを増やす手立ては容易には見いだせない。

 国は県外から招いた医師の人件費を補助する県の制度に財政支援しているが、人材を確保する作業は地元任せだ。
 透析医療の現状を踏まえ、県や南相馬市は国が前面に立って医療人材の確保に努めてほしいと要望してきた。これに対し、厚生労働省地域医療計画課は「大災害などの際は、国が医療チームを派遣する支援策が法制化されている。その後の医師不足に対応する法律はなく、国が自由に配置できる医療スタッフもいない」と説明。地元での人材育成に対する支援に力を入れるしかないとの立場を取る。
 南相馬市によると、透析治療の環境に不安を覚え、帰還をためらう避難者もいる。しかし、避難が長引けば透析患者が増えたり、症状が悪化したりするリスクが高まりかねない。
 福島医大災害医療支援講座教授の小柴貴明は「前例のない事態だからこそ、国が地元と連携して知恵を絞るべき。透析患者の交通手段の確保も含めて体制づくりを急ぐべきだ」と訴え、政府が一歩踏み込んだ対応に乗り出さない現状を憂う。
 震災と原発事故から6年2カ月余り。避難指示の解除が進む一方、住民がかつての生活を取り戻す上での課題は山積みとなったままだ。その解決は国から地元に委ねられつつある。被災地は今、改めて政府に問う。「復興」とは何か。(敬称略)

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相馬地方の病院にある人工透析センター。今後の患者の受け入れが課題となっている
相馬地方の病院にある人工透析センター。今後の患者の受け入れが課題となっている

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