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【改正特措法施行】先を見据えた対応を(5月20日)

 東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域内への特定復興再生拠点整備や福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の推進などを盛り込んだ改正福島復興再生特別措置法が19日、施行された。復興政策は新たな段階に入る。政府はこれまでの蓄積を踏まえ、先を見据えた施策を講じるべきだ。
 「3・11」から6年余りが経過し、被災市町村の復旧・復興の進度には大きな開きが出ている。中でも双葉郡は顕著だ。いち早く帰還に取り組んできた広野町や川内村は住民のほぼ8割が戻り、楢葉町も日常生活を取り戻しつつある。一方、帰還困難区域を除いて避難指示が解除されて間もない富岡、浪江、葛尾の各町村の取り組みは緒に就いたばかり。比較的放射線量の高い大熊、双葉両町には依然、避難指示が出されたままだ。
 行政需要は復旧・復興の進度によって異なり、市町村からの要望・要求も多様化する。個別にみれば切実な課題が背景にあり、政府は一つ一つに丁寧に対応しなければならない。ただ、要望に応じ、やみくもに施策を講じるだけでは、期待されたような効果が得られない場合もある。
 例えば企業誘致だ。震災と原発事故は多くの住民の生業[なりわい]を奪った。帰還する被災者のために雇用の場は欠かせない。しかし、実際に企業が立地してみれば、ミスマッチなどで従業員が集まらず、就業したのは周辺自治体の住民だったというケースも出てきている。先行する市町村の状況などを分析し、確実に事業効果が得られるよう制度設計などを見直す必要がある。
 また、広野、川内両町村は住民の帰還に向け、商業施設や医療体制の整備、教育環境の充実などに力を入れてきた。住民の8割が帰還したのは、きめ細かな努力の成果といえる。気になるのは若年層の帰還率が他の年齢層に比べて低く、人口構成にゆがみが生じている点だ。復旧・復興が進むと、少子高齢化と人口減という地方共通の課題に突き当たる。他の町村も恐らく避けられない。新たな局面への移行を視野に入れた施策展開も求められる。
 被災地の復旧・復興に向けては、先行する市町村でさまざまな事例が積み上げられている。手探りで進められてきた取り組みには成功も失敗もある。重要なのは、それぞれの経験から学び、今後の復興行政や施策全体に生かしていくことだ。政策や制度の見直しに際しては貴重な事例をもたらした先行市町村を支援対象に含めることも忘れてはならない。(早川正也)

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