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【県産農産物】売る工夫を磨こう(6月7日)

 福島産の農産物を買いたいのに店頭に並んでいない-。全国の消費者を対象とする県の調査で明らかになった。東京電力福島第一原発事故発生以降、本県の一次産業は苦戦が続く。風評の影響は大きいものの、おいしくて高品質の農産物を食卓に届ける工夫と努力がまだ足りないのではないか。消費拡大に向けた取り組みを一層磨き、農業振興を図っていく必要がある。
 県は首都圏、阪神圏、中京圏、北海道、沖縄県、本県の消費者計1500人を対象に2月に実施した調査結果をまとめた。20~60代の女性がインターネットで答えた。
 外食で本県産の野菜や果物を「積極的に食べたい」「食べてもよい」は計69.5%、「積極的に買いたい」「買ってもよい」は計67.1%だった。ところが、店頭で「よく見かける」「ときどき見かける」は計41.9%にとどまる。「買っている」は27.5%しかいなかった。コメについては店頭で見かける割合と購入の割合はさらに下がる。
 半数以上の人は本県産を目にする機会がない。買いたくても買えない人が大勢いるに違いない。これでは販売量は伸びない。消費者の期待に応えられていないのが現状だ。
 県産農産物の供給量は東日本大震災前の水準に戻ってきたが、全国の平均価格との差は縮まらない。価格が低迷しているため農業産出額も震災前に戻らない。味と品質に見合った評価を受けられない。関係者はどれだけ悔しい思いをしていることか。
 県は「ふくしまプライド。」を掲げて発信力強化を図っている。今年度は首都圏の量販店で県産農産物の販売スペース拡充を目指す。放射性物質の調査結果などを詳細に公表して安全安心を届けるのはもちろん、販路開拓と販売力強化が鍵を握る。そのためには、生産者、JA、県、市町村などが一体となって動かなければならない。
 参考事例はある。JA会津よつばと会津地方の全17市町村は8月に東京で初の合同トップセールスを展開する。各市町村長も参加して市場や量販店などに売り込みを掛ける。規模の大きさもさることながら、販売に懸ける熱意を生産地が首都圏の関係者に直接訴える意義は大きい。昨年3月に誕生した広域JAの利点を生かした発想が光る。
 県産農産物の購入をためらう人は依然としている。消費者庁の調査では毎年大きな変化はない。ためらう人を減らす努力に加えて、買いたい人に届ける仕組みづくりに知恵を絞ろう。売れない理由は風評だけではない。(鞍田炎)

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