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【原発廃炉】県民の理屈どうつくる(6月8日)

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が、東京電力福島第一原発の廃炉に関し政府が今夏決める溶融燃料(燃料デブリ)の取り出し方針の技術的根拠となる「戦略プラン」の骨子案を発表した。
 「石棺」方式に言及した昨年版のプランは、県民の強い反発を招き、文言撤回の事態になった。今後、廃炉に向けた調査、研究が進む中、県民にとって受け入れがたい事実が示されることがあるかもしれない。その時、どんな理屈で県民の立場を主張するべきだろう。技術分野など専門的理解も踏まえて理論構築する必要があるのではないか。
 NDFが示す廃炉や汚染水対策の役割分担の資料図に政府、東電、研究開発機関、原子力規制委員会はあっても、最も影響を被る県や県民は存在しない。プランやそれに基づく政府の中長期ロードマップ(廃炉工程表)が成案となる前に、県に示される機会はあるのだろう。しかし、原子炉の現状、技術開発などで常に最新情報を有する国側などとは大きな格差がある。現状のままでは県民にとって重大な判断をする際の根拠を得ることが難しくならないか。
 先日、政府の福島第一原発事故調査・検証委員会委員を務めた九州大大学院の吉岡斉教授の講演を聴いた。「穏健な脱原発派」と称する吉岡教授は以前から解体撤去は無理と主張。この日も、原発技術者OBの見方をまじえ「『石棺』は永久のイメージがあるから『外構シールド』と言うようになった。余計な放射能を今の段階で浴びてコストを上げるのをやめて、100年、200年待ってどうするか判断する先送りもある」と、政府方針に否定的な考えを語った。
 一般研究者の意見であり、政府から「解体撤去まで30~40年」とする従来の工程表から外れる方針が出ているわけではない。しかし、燃料デブリの確認作業からして廃炉の困難さを見せられているのが県民にとって現実だ。
 戦略プランは事故で発生したリスクを、継続的かつ速やかに下げることが基本方針だ。しかし社会的に許容しにくい作業上の危険やコストの膨張、現代の科学では克服不能な技術上の障害が明らかになった場合、本県と社会全体が求める利益は相反する可能性がある。その時、本県はどう主張するべきだろう。
 県側が戦略プランや工程表の決定過程で従来より積極的に関与できないだろうか。廃炉に向けた本県の理論を構築するため、専門組織をつくるのも一策だ。長期的な社会の合意形成の仕組みも必要と考えられる。(佐久間順)

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