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【県文学賞70年】福島の思いをつづる(6月15日)

 県文学賞は今年、70回の節目を迎えた。戦後を県民とともに歩み、思いを映し、県内文壇の礎となった。作品は7月末まで募集している。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から立ち上がる福島で、今度はどんなに強く、優しい言葉がつづられるだろう。多くの応募を期待する。
 県文学賞は昭和23年、県内の文学振興と文化の発展を図るために創設された。現在は小説・ドラマ、エッセー・ノンフィクション、詩、短歌、俳句の5部門を設け、昨年は309点の応募作から正賞4点と準賞7点、奨励賞6点、青少年奨励賞5点が選ばれた。
 時代の空気や社会情勢を背景に作品が生まれる。震災後は過酷な体験を記したノンフィクション、やり場のない怒りや痛みがにじむ詩、短歌、俳句などが読む者の胸を打った。あえて震災のことは書かないと決めて自らの世界を追究する作者もいる。本県文学の懐の深さを感じさせる。
 県文学賞70周年を記念する講演会と短歌、俳句のワークショップが7月9日、福島市の民報ビルで開かれる。俳人の黛まどかさんが講師を務める。「ふくしまを詠む 黛まどかの俳句紀行」を本紙に連載してきた。
 「降る雪に集ひて朱きこづゆ椀」
 「初陣の武者に青嶺の澄みわたる」
 「風を抜け花野を抜けて絹の道」
 県内各地を歩く黛さんの句からは、四季折々の古里の匂い、祭りの高ぶり、手仕事に精を出す人たちのすがすがしさが伝わる。
 黛さんは飯舘村の「までい」の精神に重ねて言う。「手間暇の一つ一つこそが即ち『生きる』ことであり、その積み重ねに人生がある」。講演会では「風土と言葉」と題して語る。文学を通して足元の魅力を見直すヒントになりそうだ。
 短歌の講師となる斎藤芳生さんは平成19年に角川短歌賞を受けた。故郷福島の季節をみずみずしく詠む。
 「摘花作業の始まる朝よ春なればふるさとは桃花水にふくるる」
 俳句は益永涼子さんが講師を務める。
 「昼すぎの眠気に冬の計算器」
 日常を感性豊かに捉え、平成10年の県文学賞正賞に輝いた。本県を代表する歌人、俳人がやさしく講義する。
 多くの中高生が受講し、思いを言葉にして県文学賞に挑戦してほしい。入賞作は県文学集として刊行される。福島の今を生きる言葉の輝きが末永く刻まれる。(佐藤克也)

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