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【「共謀罪」法成立】恣意的運用を許さない(6月16日)

 今国会の焦点だった「共謀罪」法が成立した。与党は参院法務委員会の採決を省略する「中間報告」という異例の手続きで採決を強行した。日本の刑法体系を激変させる重要な法律が、通常の国会運営の原則から外れるような手法で成立したのは大変残念だ。
 国民が抱く法律への懸念を十分拭うに至らない段階で審議を終了させた自公両党の判断は、国会議員が有権者から委託された役割を放棄したように見える。審議を深めることより、「加計学園」問題や東京都議選への影響という政権や党の都合を優先して採決を急いだことは、国会の在り方に大きな禍根を残した。
 成立した改正組織犯罪処罰法は、犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新たに設けるものだ。
 日本の刑法では、殺人など一部の重大犯罪を除き、実行があって初めて処罰されるのが原則だ。
 テロ等準備罪では、テロ組織などの組織的犯罪集団の構成員らが2人以上で、対象となる277の犯罪の実行を計画し、現場の下見といった準備行為をすれば、計画に加わった全員が処罰される。
 国会審議では組織的犯罪集団の定義や、構成員・関係者の範囲について、担当大臣から国民が安心できる明確な答弁があったとは言いがたい。
 これまで犯罪ではなかった計画段階から罰するということは国民の権利の範囲が従来より狭まるということだ。日本国憲法が保障してきた思想信条の自由など基本的人権に影響を及ぼす可能性がある。
 法律の運用について、政府側は要件が厳格で乱用できないとする一方、反対派は捜査機関による恣意[しい]的な認定の可能性を指摘してきた。しかし、厳格な定義や運用が明確に示されなければ、国民の側には自主規制、萎縮、相互監視といった感情が生じかねない。戦後日本の重要な価値である自由で寛容な社会の在り方を損ねる恐れがある。
 テロ対策は必要だが、マスメディアや国民は反テロを「錦の御旗」とするような恣意的な運用を許さないよう目を光らせ、声を上げ続けなければならない。計画や準備行為の立証のため、捜査機関が捜査手法の拡大を求めることも考えられる。歯止めとなる規制が必要ではないか。
 安全保障関連法の時もそうだったが、政府与党は強引な手法で内閣支持率が多少下がっても、政権運営に大きな影響はないと見ている。「安倍一強」のおごりだ。これが国民が望む「決められる」政治だろうか。(佐久間順)

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