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【震災遺産の継承】散逸を防ぐ共感と協力(6月17日)

 地震発生時刻に止まった時計、ゆがんだ側溝のふた…。神戸市にある「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」は、22年前の経験と教訓を伝え続ける。所蔵資料は「モノ、紙、写真、映像と音声」が18万9100点余り、図書などの刊行物が3万9500点余りに上る。
 東日本大震災の様子や記憶をとどめる資料が身の回りに残っていないだろうか。県は4月に福島大と委託契約を結び、収集や保存の取り組みを本格化させた。目的や種類を示すガイドラインを6月上旬に公表し、時計や看板、日記、炊き出し用の大鍋などを例に挙げた。提供を呼び掛けるチラシを近く県内外に配る。震災遺産の継承に多くの共感と協力を得られるように、活用や公開のルールを早めにまとめる必要がある。
 歴史的な資料を取り扱う際に、アーカイブ(複数形でアーカイブズ)という外来語が使われる。県によると「記録や資料などをひとまとめにして保存すること」「まとめられた資料群」「保存場所や保存・公開機関」を意味する、という。県は3年後に双葉町に拠点施設の開設を目指す。相馬市は伝承鎮魂祈念館を設置した。他の市町村でも施設の整備を計画したり、デジタル技術を生かしたアーカイブの運用を始めたりしている。
 県は既に県歴史資料館に委託し、写真や動画などの約3万6500点や、380人余りの体験証言を集めた。また、県文化財センター白河館、県立博物館(ふくしま震災遺産保全プロジェクト実行委員会)、県立図書館、県立美術館、ふくしま歴史資料保存ネットワークなどの機関、団体も収集や保全に関わる。同ネットワークは17日に郡山市でシンポジウムを開く。
 これらの成果を集大成しながら県、市町村、国、企業、団体、研究機関が役割を分担し合う仕組みづくりが欠かせない。震災関連の公文書の保存と廃棄の線引き、保管場所の確保、公開と非公開の基準の検討も重要だ。
 神戸市にあるセンターは兵庫県が設置し、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構が運営する。本県の拠点施設は(1)県の直営(2)県の運営を基本に一部を民間に委託(3)民間などに全てを委ねる指定管理者制度-から選択されるとみられる。施設は博物館、図書館、文書館の働きを併せ持つ。法令で資格を定める学芸員や司書に加え、公文書を含む歴史資料を管理する人材(アーキビスト)も大切だ。どの運営方式にせよ、専門職の確保と育成が課題の一つといえよう。(安田信二)

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