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【パリ協定の行方】潮流は変わらない(6月19日)

 トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの自国の離脱を表明してから半月余りが過ぎた。先進国だけでなく途上国からも非難の声が上がる。世界第2位の温室効果ガス排出国である米国の判断は無責任のそしりを免れない。
 温暖化対策の枠組みからの米国の離脱は京都議定書に続き2度目となる。同議定書の教訓を踏まえ、190カ国以上が全会一致で合意したパリ協定は、目標に法的拘束力を持たせず緩い規定にした。先進国、途上国いずれも乗りやすく効果の前進が期待された。それが「米国に不利益を強いるだけ」という理由で、あっさり方向転換されてはこれまでの世界の努力を無にするものでしかない。超大国のトップが短期的な視点しか持てないのは愚かなことだ。
 先にイタリアで開かれた先進7カ国(G7)環境相会合では、パリ協定重視を訴える日欧と米国との溝が鮮明になった。昨年の富山市での同会合で発表された共同声明は何だったのかと問いたい。
 ただ、昨年の大統領選でのトランプ氏の主張を考えれば、離脱は想定されていたことでもある。環太平洋連携協定(TPP)からの離脱と同じ流れだ。パリ協定から実際に離脱できるのは早くて4年後になる。日本としてはトランプ氏と個人的関係を築いた安倍晋三首相が「物言うパートナー」になって、再考への説得を尽くしてもらうしかないだろう。
 再生可能エネルギーの分野では各国で技術革新が進む。東京電力福島第一原発事故で被災した本県は一大メッカになりつつある。温暖化対策は新たなビジネス創出につながる。パリ協定を批准した多くの国が温暖化対策と経済成長の両立を図ろうとしている。
 県は今年3月、県地球温暖化対策推進計画を改定した。2020年度の温室効果ガス排出削減目標を2013年度比で25%減、2030年度で45%減とする独自の目標を掲げた。米国の動きは県民総ぐるみの温暖化対策に向けた機運に水を差す形となったが、県環境共生課は「やるべきことは変わらない」と県の環境施策が影響されないことを強調している。県内外の企業も同様で、再生可能エネルギーの創出や節電に努める姿勢を打ち出しており、頼もしい。
 一大国の身勝手な振る舞いに関係なく、温暖化対策の世界的な潮流はこれからも変わらない。今月は環境月間でもある。私たち一人一人が次世代のために、地域で息の長い温暖化対策に取り組んでいく必要がある。(浦山文夫)

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