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【アーカイブ施設】中身が見えない(6月26日)

 県が2020年夏までに双葉町中野地区に開所させる東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の「アーカイブ(記録庫)拠点施設」の中身が見えてこない。周辺で整備が計画されている復興祈念公園や町の復興産業拠点にも関わる施設であり、保存・展示物や運営方法などを早急に詰め、調整を図るべきだ。
 基本構想は3月にまとまっている。世界に類を見ない複合災害の記録や教訓を世界と共有し、防災・減災、復興の加速につなげることを基本理念に掲げた。延べ床面積は約5200平方メートルで、白河市の県文化財センター白河館「まほろん」や三春町の県環境創造センター交流棟とほぼ同規模となる。総事業費は約55億円を見込んでいる。
 設計業者も決まったが、施設で取り組む事業については記録や記憶の「収集・保存」、複合災害の「調査・研究」、福島の光と影の「展示・プレゼンテーション」、原子力災害の経験に基づく「研修」など大枠が示されているだけだ。運営面でも「語り部」や事業サポーターの育成などを挙げるにとどまっている。
 いわき市や富岡町は独自に震災遺産などを保管・展示する施設の整備を計画している。三春町の県環境創造センターの一部業務を含め、それぞれの取り組みはアーカイブ拠点施設と重なる。双葉町は拠点施設を訪れる人を見込んで復興産業拠点整備を目指している。構想の具体化が遅れれば、他の事業にも影響を及ぼしかねない。
 不思議なのは隣接地から浪江町にかけて整備される復興祈念公園については別に準備が進められている点だ。公園の基本構想案に示された基本方針は「事実をつたえる」「縁をつなぐ」「息吹よみがえる」など、言葉こそ違え、アーカイブ拠点施設の基本理念とほとんど変わらない。本来ならば両施設を一体と捉えて事業内容を詰め、運営も一元化した方が効率的だし、効果も引き出しやすいはずだ。
 また、県の今後のスケジュールをみると、資料収集と施設・展示の設計を並行して進める予定になっており、収集業務が本格化するのはこれからだ。まずは、保存・展示物の収集を最優先で進め、資料の全体像を把握しなければ、施設設計も展示製作もできないのではないか。首をひねらざるを得ない。
 開所時期は東京五輪を視野に設定されている。開所ありきで突っ走れば、中身のない「箱モノ」になる恐れもある。求められているのは、世界史に残る出来事のアーカイブ施設だ。(早川正也)

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