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メディアに責任転嫁の愚論(7月9日)

 そこまでやるのか。その異常さに驚いた。トランプ米大統領が自身のツイッターで流した動画のことだ。プロレスの場外乱闘場面。トランプ氏が背広姿で登場し、顔にニュース専門テレビ局「CNN」のロゴを付けた男性を引き倒し、何度も殴りつける映像である。
 加工されたものだが、昨年の大統領選で疑惑となったトランプ陣営とロシアとの関係などを、厳しく追及し続けているCNNに対する攻撃の一つだ。自分の気に入らない報道を「フェイク(うそ)ニュース」と決めつけ、CNNを「ゴミ」などと悪罵を浴びせ、今度はわざわざ動画を作成したのである。
 当然、CNNは「記者への暴力」だと批判した。CNNはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストの有力両紙と並んでトランプ政権に対して厳しい取材、報道を続けている。
 トランプ氏の支持率は40%前後で、歴代大統領と比べてかなり低い。そのいらだちがメディア批判を激化させる原因になっている。権力者は国民の批判にさらされ苦境に陥ると、矛先をメディアに向ける。日本でも同じことが起きた。自民党が歴史的な大惨敗を喫した東京都議会選挙。そのさなかの自民党の二階俊博幹事長のメディア批判である。
 「言葉ひとつ間違えたらすぐ話(ニュース)になる。わたしらを落とすなら落としてみろ。マスコミだけが選挙を左右すると思ったら大間違いだ」「われわれはお金を払って(新聞を)買っているんだよ。買ってもらっていることを忘れちゃダメじゃないか」。報道に対する認識を疑う暴言ではないか。メディアは選挙中も含め、与野党の幹部の発言を注視し、国民に伝える責務を持っている。報道をどう判断するかは有権者であり、報道機関が「選挙を左右しよう」とか特定の候補者を「落とす」(落選させる)などは念頭にあるはずもない。「お金を払って」うんぬんは新聞に対する脅しのように聞こえた。
 麻生太郎副総理兼財務相も「マスコミはかなりの部分情報が間違っている。書かれているからよく分かる」「そんなものにお金まで払って読むか」と批判した。だが、どこが間違っているのか、具体的には言及しない。
 「新聞は部数が減っている。自分でまいた種ではないか。この間、ある新聞の社長が言っていた」とも述べた。そんなことを言う新聞人が本当にいたのだろうか。
 自民党が都議選で惨敗したのは安倍晋三首相とその側近に原因があった。首相の「腹心の友」が理事長の加計学園問題で、側近の萩生田光一官房副長官の関与を裏付ける文科省の文書や証言が明らかになっても、まともな説明もしない。首相が後継者の一人として重用してきた稲田朋美防衛相の大失言がとどめを刺す。メディアへの責任転嫁は論外であった。(国分俊英 元共同通信社編集局長、本宮市出身)

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