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【東電新経営陣】あきれ果てた発言(7月13日)

 あきれてものが言えないとはこういうことなのだろう。原子力規制委員会が10日、東京電力の川村隆会長、小早川智明社長ら新経営陣を呼び、福島第一原発の廃炉など今後の原子力事業に対する姿勢をただした。「福島への責任」について問われた川村会長は「新しいタイプの原子力が動かせることを見せる責任がある」と発言した。なぜ、福島への責任が原発の再稼働なのか。全く理解できない。
 この日、田中俊一委員長(福島市出身)は川村会長らが「福島が東電の原点」「福島への責任を果たす」などとしている点に触れ、責任の中身を問うた。川村会長は「直接的には賠償、除染、廃炉」とした上で、「根源的には今後の原子力の活用に関して不安を国民や世界に与えた責任がある」と述べた。
 さらに「原子力なしではこの後やっていけないことを示すのが大事」「事故を起こした当事者が発電所をきちんと動かせたことが国民に分かれば、原子力にとって大きい」などと持論を展開した。今なお厳しい生活を強いられている被災者が大勢いる中で、よくも言えたものだ。
 業界内でのあいさつのような発言に田中委員長は「違和感がある」とし、「(原子力事業について)福島の人たちは決して、そんな判断をしているとは思えない」と指摘した。また、被災地の思いを挙げながら「除染や賠償だけでは福島に寄り添うことにはならない。きちんと生活できるようにすることが大事。住民の生の声を聞き取っているのか」と批判した。
 東電の新経営陣は6年4カ月前、県内で何が起きたのかを知らないわけではあるまい。その後、県民が歩み続けている苦難の道の険しさをどれだけ分かっているのだろう。原因企業のトップの発言からは被災地、被災者への思いはみじんも感じられない。「福島のためと言いながら、柏崎刈羽原発(新潟県)を動かすことに相当、前のめりになっているのではないか」と委員がただしたのも当然だ。
 福島第一原発の廃炉を巡っては、国側の意向を踏まえて対応したいなどとする新経営陣に対し、委員から「国側で結論が出ないことを言い訳にして問題を先送りしている」「厳しさに向き合わなければ廃炉などできない」など厳しい意見が相次いだ。新経営陣が答えに窮する場面もあり、田中委員長は廃炉に対する考え方を文書で示すよう求めた。いくら言葉で取り繕っても、内実が伴わなければ見透かされる。東電はいいかげん学んだらどうか。(早川正也)

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