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松川事件(8月17日)

 1949(昭和24)年8月17日未明、福島市の東北本線金谷川-松川駅間で列車が脱線、転覆し乗務員3人が亡くなった。事件への関与を疑われ、逮捕・起訴された人は全員無罪となった。松川事件は戦後最大の冤罪[えんざい]として人々の脳裏に刻まれた。
 「決して忘れられるものではない」。横倒しとなった蒸気機関車から立ち込める白煙、血だらけとなった人々の悲痛なうめき声…。列車転覆の一報で現場に駆け付けた警察官は、既に事件発生から半世紀近くたっていたにもかかわらず昨日のことのように述懐した。
 福島大は松川事件の関係資料を世界記憶遺産とすべく日本ユネスコ国内委員会に登録申請した。関係者による懸命の活動も届かず、推薦は見送られた。当時を知る人は少なくなっている。貴重な資料群をいかに後世に伝え、光を当てるのか。模索は続く。
 「容疑者は無罪になった。では、誰がやったのか。亡くなった人や遺族が気の毒でならない」。現場に臨場した警察官は自問自答を続けた。発生から68年が過ぎ、語られる機会は減りつつある。だが、冤罪は無くならない。記憶は薄れるが、記録は残る-。物言わぬ資料の数々が雄弁に語る。

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