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気遣い、思いやりの社会を(8月20日)

 互いに他者を思いやりながら生きる社会が理想だ。自分も大事だが、その前に相手のことを気遣うことの大切さを子どものころに母親から教えられた。例えば、3人の前に二つの菓子があり、どうぞと言われた場合、先に手を出してはいけない。自分が食べられなくても他人に譲れと言うのだ。これが社会を円満に渡っていく知恵なのかと思った。これでは、激しい競争社会を生きてはいけないと考える人もあるだろう。これは極端な教えかもしれないが、日本社会に受け継がれてきている「謙譲の美徳」の表れではないかと今になって思うのだ。
 最近気になることが二つある。一つは、主に政治家の間で呪文のように唱えられている「○○ファースト」という言葉である。これは、何を一番大事にするかと言うときに、まず第一に考えるべきものを指しているようだ。
 米国のトランプ大統領は、しきりに「アメリカ・ファースト」を唱える。自国利益至上主義とでも言うべき考え方が行動原理の原点にある。何をおいても、米国の利益を第一に考え行動し、それ以外の施策は採らないと言うのだ。それで米国は環太平洋連携協定(TPP)も、地球温暖化対策の国際的な取り決めであるパリ協定も離脱した。あくまでも自国の利益優先で、公益に資するものであっても切り捨てる。しかし、国家間の交渉、個々の取引等においても、損をする場合もあれば得をする場合もあり、全体的な利益を見て行動すべきは自明の理だ。自国が損をする場合でも、あえてやらなければならないこともある。
 小池百合子東京都知事も「都民ファースト」を唱える。しかし、都知事としては当たり前の話で、言わずもがなだ。何か特別の意図を感じるのは私だけだろうか。
 二つ目の気になることは、スマホや携帯電話に取りつかれてしまったような現代の若者の姿である。混雑した道路でも、横断歩道上でも、駅のホームでも、電車内でも、レストランで食事中でもスマホから目を離さず、操作に熱中している。他人の動きなどには目もくれず、迷惑などは意に介していないようだ。もはや、これは放っておけない状況に達しているのではないか。これは、自己中心的な振る舞いの最たるものだ。彼らのスマホをのぞいてみると、ほとんどがゲームなどに興じているもので自分の世界にはまって、外のことが目に入っていないようだ。
 米国ハワイ州のホノルル市では、道路横断時の歩きスマホに罰金を科する条例が制定されたという。これは日本でも、実施されるべきだと思う。このままではトラブルが発生し、不測の事件・事故も起こりかねない。われわれの地球上においては、人類は同じ星に生まれた運命共同体としてお互いを尊重し慈しみ合いながら生きていかねばならないのだ。
 かつて、己の命の危険を顧みず、ホームから転落した男性を救うために線路に飛び込み、犠牲になった韓国人留学生らの行動を思い出した。(宗像紀夫、内閣官房参与・弁護士、三春町出身)

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