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百日紅(8月21日)

 今年は夏らしい夏が来ないまま秋になってしまうのか。県内は2日に梅雨明けした後、浜通り、中通り北部を中心に曇りや雨の日が続いている。高浜虚子に〈炎天の地上花あり百日紅[さるすべり]〉という句がある。曇天に色鮮やかなサルスベリの花は似合わない。
 サルスベリは夏の季語だが、実際は夏から秋まで約3カ月もの間、花を付ける。紅色やピンク、白い花を100日間、咲かせるというのが名前の由来だ。読み方はサルが登れないほどに滑らかな幹を持つことにちなむ。
 福島市南矢野目の市道に約500メートルにわたり、約50本のサルスベリが街路樹として植えられている。見事なほどに今がちょうど満開だ。すぐ東側に浪江町から避難した町民の仮設住宅が立ち、近くには大型店や飲食店も並ぶ。枝いっぱいに咲かせた花は、不自由な暮らしを強いられている町民を慰め、多くの買い物客を楽しませることだろう。
 盛り上がらないままの夏がそろそろ終盤だ。福島地方気象台によると、今月の福島市の日照時間は平年の3割程度となっている。せめて数日でも、真夏の日差しがさんさんと降り注ぐ青空の下で、咲き競うサルスベリを見て、虚子の心情に触れてみたい。

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