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いわき市長選告示の日に(9月3日)

 東日本大震災前は、海外旅行先で自分が住むいわき市の場所を説明するのに難儀した。「東京より約200キロ北で太平洋に面する広い面積のマチ」などと言ったことがあったが、昨年のスペイン旅行では「日本のいわき」でほぼ分かってもらえた。時には同情の眼差[まなざ]しさえ感じた。優れているとか、素晴らしいとか、いい意味で有名になるのはなかなか大変だが、マイナスのイメージは「悪事千里を走る」のごとく非情なものだ。原発事故の被災地の名は、今も世界の隅々で忘れずにいてもらえるのだろう。何をどうすればプラスイメージがつくれるのだろうか。
 世界に名が知られるようになったいわき市の、今日は市長選挙の告示日だ。一週間後の10日に投票が行われる。昨年、市制施行50周年を祝ったいわき市にとって、14代目の市長を選ぶことになる。5市4町5村の大合併で誕生したいわき市は当時、面積が日本一広い市というニュースバリューもあって、最初の市長選の投票率は平日にもかかわらず88.79%と高かった。この高い投票率は50年間一度も塗り替えられることもなく、4年前の市長選の投票率は51.13%と、辛うじて半分を超えた程度だった。こうした流れを冷静に分析することが肝要だろう。
 前回は現職1人、新人3人で選挙戦が行われた。今回は新人1人が抜けただけで、現職1人、前職1人、新人1人と顔ぶれは前回と全く同じなので、各人の4年間の活動はほぼ把握できる。大切なのは18歳選挙権導入後初めて行われる市長選という大きな変化を、上手に取り込んだ参政意識の高揚のための施策が求められるということだ。
 今春の田村市長選は、2005(平成17)年の新市発足後に無投票が3回続いていたこともあって、72.32%と見事な投票率となった。しかし、すぐ後に行われた郡山市長選は38.05%と低い数値にとどまった。
 今度の市長選を、いわき市の名をプラス要因で有名にする好機と考えよう。選挙管理委員会をはじめ、人生の先輩である私たちが範を示し、新しく加わる若者に選挙がいかに自分たちの未来につながるかをあらゆる手段を用いて伝えたい。この時期は台風の発生などが考えられるので、期日前投票や不在者投票を利用するなど、棄権をしないように働きかけていくような的確な施策も期待したい。
 「いわき市は日本一投票率が高い市」と言われることを目標としたいが、まずはいわき市発足当時の投票率や、田村市をしのぐくらいの数値を目指したい。初めて投票する権利を手にした若者よ、その若い力を発揮し、市政発展のために、貴重な一票を生かそう。投票は決してゴールではない。投票率の高い数値によって、第14代の市長が票の重みを真摯[しんし]に受け止めて、市政を掌[つかさど]る責任を一層自覚することにつながるはずだ。
(磐城桜が丘高校同窓会長 玉手匡子)

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