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【「仮設」打ち切り】生活困難者を生むな(9月8日)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により川内、川俣、南相馬、葛尾、飯舘の5市町村の避難解除地域から避難する住民向け仮設住宅と借り上げ住宅の無償提供が2019(平成31)年3月末で打ち切られる。県内外合わせて3688世帯が対象となる。住む家を確保できず、路頭に迷う人を生んではならない。行政は福祉政策も総動員し、避難者の住まいと暮らしを守る責任がある。
 県は避難指示区域や避難解除地域のある9市町村からの避難者への無償提供を同年3月末まで1年間延長すると決めた。ただし、先の5市町村の一律延長は最後とする。
 第一原発周辺の富岡、大熊、双葉、浪江の4町と、葛尾、飯舘両村にある帰還困難区域からの避難者に対して同年4月以降、延長するかどうかは検討課題とした。無償提供の期限は従来、2018年3月末までとしていた。
 県は仮設住宅や借り上げ住宅を出た後の受け皿となる災害公営住宅の整備や、自宅の新築改修の状況を踏まえた処置とした。想定通りに住宅を自分で確保できる人はいい。大切なのは、家族の事情で災害公営住宅へ入居できない、あるいは自力で住宅を確保できない人への対策だ。
 心身に障害を持つ人、要介護者、難病患者、妊娠中の女性、乳幼児を持つ家庭、一人暮らしの高齢者や夫婦だけの高齢者世帯など、いわゆる社会的弱者へこそ、救いの手を差し伸べなければならない。医療や福祉の助けが必要とされるためだ。働けないため収入が少なく、経済的自立が困難な人もいるはずだ。
 こうした人たちへの対応を単なる住宅問題と捉えてはなるまい。個々の事情に応じて福祉サービスを手厚くしたり、場合によっては新たな制度づくりが必要かもしれない。避難者に寄り添った生活再建の施策充実を期待する。
 県は2018年3月末で無償提供が一足早く原則終了となる楢葉町で、町と連携して避難先を出た後の意向調査や避難先の戸別訪問などを続けている。町民の事情を聞き取って古里への帰還や恒久的な住宅確保、生活再建の支援に役立てる狙いだ。健康で働ける人への生活支援はもとより、自立困難な人を正確に把握し、支援策を講じてほしい。他市町村のモデルとなろう。
 仮設住宅と借り上げ住宅をゼロにするのが行政の仕事ではない。自立できる人も、他人の力を借りて暮らさざるを得ない人も、等しく安心して暮らせる住まいと生活環境を整えるのが復興のゴールであるべきだ。(鞍田炎)

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