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復刻版的な安倍改造内閣(9月10日)

 安倍晋三首相が改造内閣のネーミングを「仕事人内閣」とし、その看板政策に「人づくり革命」を打ち出した。既視感が漂う。「仕事人」は人気時代劇「必殺」シリーズから借用したわけではあるまい。中曽根康弘元首相が1982(昭和57)年就任時「仕事師内閣」と称した、その焼き直しではないのか。
 中曽根氏は自民党総裁選で、田中角栄氏(ロッキード事件で離党)が率いる田中派の全面支援で圧勝する。そして、官房長官はじめ閣僚や党幹事長に田中派の有力者をずらり起用したことから「角影内閣」と酷評された。中曽根氏はこれに反論、力のある人材を集めた「仕事師内閣」だと力説したものである。
 「人づくり」は1962年、当時の池田勇人首相が作り出した言葉。「国づくりは人づくり」だとして、学者などを集めた「人づくり懇談会」を設置し、この結果を受けて保守色の濃い「期待される人間像」のとりまとめに入る。
 ネーミングも政策も過去の政権の復刻版的なのだ。森友・加計問題で内閣支持率が低迷している。改造を機にそこから脱したいという思惑からだろう。だが、急ごしらえではないか。
 安倍首相は政権に復帰して12月で5年になる。この間さまざまな言葉を用い、政策を繰り出してきた。主なものだけ見ても、アベノミクスと呼ぶ経済面では「三本の矢」の次に「新三本の矢」、それに「地方創生」「一億総活躍」「女性活躍」と続き、昨年は「働き方改革」である。
 今度は「人づくり革命」だという。政治用語で言えば、革命とは被支配階級が支配階級から国家権力を奪いとるという意味。左翼用語であり、歴代自民党政権下では絶対使われなかった。大胆な変革や改革というつもりなのだろうが、言葉が過激化し、躍っているように思う。
 その中身は首相が議長の「人生百歳時代検討会議」で議論していく。メンバーに各界から有名人などを集めるというのは、過去の池田元首相と同じ手法だ。超高齢化時代の経済社会のあるべきシステムを論議し、年内に中間報告、来年夏に最終報告をまとめるという。だが、国民の生活や生き方に関わる重大テーマがこう簡単にまとめられていいものだろうか。
 女性の活躍の場を拡大するとか、残業規制などの働き方改革など時代にそった着眼はいいとして、問題は相次ぐ政策がどこまで効果を上げたのか、弊害や反作用はなかったのか、阻害要因は何かといった詳細な検証が、全てにわたって行われていないことだ。アベノミクスがその典型だろう。
 各種世論調査に表れているのは、森友・加計問題で表面化した首相自身に対する不信である。また新たに「人づくり革命」を掲げる程度で、国民の不信が解消されるとも思えない。(国分俊英 元共同通信社編集局長、本宮市出身)

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