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【介護事業再生】不十分な人材確保策(9月21日)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で不足している相双地方の介護人材の確保に向け、復興庁は2018(平成30)年度予算の概算要求に11億円を盛り込んだ。初めての措置で、職員を派遣する福祉事業所への補助制度の新設や就労希望者への就職準備金の引き上げなどが柱となっているが、対策としては不十分だ。
 県の調査によると、震災前に双葉郡で介護サービスを提供していた特別養護老人ホームなど48事業所のうち7月1日までに地元町村で事業を再開したのは全体の4割弱にとどまり、人材確保支援を求める回答が目立った。こうした現状を踏まえ、県は支援強化を来年度政府予算要望の重点項目に位置付けていた。
 ただ、支援内容を見ると現場の実態を十分に踏まえた対応とは言い難い。介護人材の不足は全国的な傾向だ。各地で事業所紹介などを実施しても、県内で働きたいという人を見つけるのは容易でないという。被災地や中山間など条件不利地域であればなおさらだろう。
 現行の就職準備金制度は一定期間勤務すれば返済が免除される。一時的に効果があっても、将来にわたって人材が定着するかは不透明だ。そもそも介護報酬をベースにした職員給与は復旧・復興関連事業の影響で高騰する相双地方の他の職種に比べると見劣りがする。だからといって、施設の改修など将来を見据えた事業所運営を考えた場合、そう簡単に給与は引き上げられないのが現状だ。
 こうした状況を打破するためには地元での人材育成が必要との指摘が関係者から出ている。確かに地元で就職したい、地域福祉に貢献したいという若者は少なくない。行政、事業所、職業訓練施設や専門学校などが連携し、若者が地元で介護福祉士の資格を取得し、就労しやすい環境や仕組みを整えれば、若者の定着にもつながる。ロボット産業の集積を目指す相双地方であれば、介護現場へのロボットの積極導入により、先進的で魅力的な職場づくりもできるのではないか。
 先述したように介護人材不足は人口減と少子高齢化に伴う全国的な問題だ。そのため「被災地に限った話ではない」と支援に消極的な役人もいると聞く。震災と原発事故で先鋭化した地方の課題はまず被災地で十分に予算を投じて解決策を練り、全国のモデルにするぐらいの発想をなぜ、持てないのか。その場しのぎ程度の施策に予算をつけるだけでは対策を講じたとはとても言えない。 (早川正也)

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