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これでいいのか、今の日本(9月24日)

 今、私の頭の中で渦を巻いている大きな問題が三つある。
 一つは北朝鮮の問題である。安倍晋三首相は9月20日、国連での演説で、北朝鮮は6カ国協議が行われるかたわらで、われわれを欺きながら核などの開発を進めた、と強調していた。しかし、北朝鮮が中距離弾道ミサイルや、水爆による核実験を恐るべき早さで実現したのは、実は今年に入ってからである。つまりトランプ大統領の対北朝鮮強硬策が明らかになってからだ。
 明日にでもJアラートが鳴り響き、日本の上空をミサイルが飛ぶかもしれない緊迫した状況を、全く突然に作り出したのは、今年に入ってからの米国の硬直した姿勢のためではなかろうか。
 北朝鮮に対して経済的圧力を強める方法を何回繰り返しても効果がないことは明らかなのに、さらにそれを進めようとしているのは、無策に過ぎると思う。最終的に軍事力を使うための口実をつくろうとしているとさえ感じる。
 第二次世界大戦前に育った私の目には、巨大な軍需産業の姿がちらつくし、戦後よく使われた「死の商人」という言葉も思い出す。本当に平和を願っている人々は誰なのか、よくよく見なければと思う。
 二つ目は臨時国会の冒頭に行われるという衆議院の解散である。「森友学園」や「加計学園」について丁寧に説明すると言っていた安倍首相の言葉はどこへやらだ。野党の準備不足につけ込むなど、条件がうまくそろっている時を見計らっての自民党の党利党略と言うに尽きる。これが民主主義の国だろうか。
 三つ目はようやく私の本業である。日本音楽史を大きく見渡してみると、旧石器時代のことは分からないが、少なくとも縄文時代から江戸時代末まで、日本の音楽は途中でいろいろあっても基本的に同じ性質で続いてきた。飛鳥・奈良時代に中国や朝鮮などから影響を受け、現在の雅楽まで続く音楽舞踊ができた。しかし、それは支配層の一部にとどまっている。
 ところが明治以降は、本来の流れを全く無視して西洋音楽、ヨーロッパ近代の音楽を一世紀以上にわたって組織的に全国民に押し付けてきた。例えば江戸時代までの音楽の流れを紫色とすれば、明治以降は全く関係ない赤い色に染めてしまったことになる。紫色のものは細い帯のようにわずかにとどまっているだけである。
 さらに大きく世界の音楽史から考えると、世界の音楽には多様なものがあってこそ豊かになるのに、日本の独自の伝統音楽はすっかり弱くなって、日本音楽の主要な流れは西洋音楽の亜流ということになってしまうだろう。
 今、日本に生きる私たちはこの流れのままに生きていけばいいのだろうか。私たちの背中には重い荷物がある。
 (小島美子 国立歴史民俗博物館名誉教授、福島市出身)

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