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【いわきの観光振興】目的になる魅力を磨く(9月28日)

 8月下旬に県が発表した昨年の観光客入り込み数は、いわき市にとって衝撃だった。県全体は一昨年より4・9%増え、震災前年の92・3%まで回復した。7つの圏域の多くが増えたのに対し、いわきは4・7%減と落ち込んだ。沿岸部の津波被災と原発事故の影響が尾を引いているだけではないだろう。旅行の目的や需要に合った観光資源の魅力づくり、ルート設定などの多様化が求められそうだ。
 いわき市が独自に調べている観光施設などの利用者に、スポーツ・文化行事の参加やビジネス客も加えた観光交流人口では、昨年は前年より1・2%減だった。1千万人を超えた震災前の7-8割の回復で足踏みしている。市は被災地の視察や支援を目的にした旅行が、ひと段落したのも要因の一つとした。
 今年は沿岸部の復興が進んだ象徴として、薄磯海水浴場が7年ぶりに海開きをした。利用客増が期待されたが、低温や日照不足により、他の海水浴場を含めて客足は戻らなかった。「天気は仕方がない」と諦めてはいけない。遊泳が難しくても浜辺や周辺でビーチバレーボール大会や祭りを催し、にぎわう時もあった。
 薄磯海水浴場では遊泳期間終了後、駐車場兼用の多目的広場で地元有志によるスケートボード体験会が開かれた。愛好者のほか多くの親子連れも詰め掛けた。東京五輪の新種目は、若者に人気がある。季節にかかわらず来訪者を増やす機会も広がるはずだ。
 最近は団体旅行より、それぞれの興味がある場などを巡る個人・小グループの旅行が目立つ。いわき市が昨年、展開したサンシャイン博は全域を会場に見立て、各地の自然や文化、特色に触れて魅力を知ってもらう狙いだった。
 趣旨を生かせば、幅広い選択肢から気に入った場所や行事に誘う効果も生まれる。一過性に終わらせず、来訪者の傾向や意見などを分析し、観光資源としての良さを磨くことが大切だ。旅行者の目的に沿った地域を回遊できる行程なども提案したい。
 交流人口の拡大には空港の利用も大きな鍵だ。いわきと福島空港を結ぶ直通バスは、利用者が少ないため10月から運休する。西日本などからの往来では茨城空港の活用もあっていいのではないか。札幌、神戸、福岡、沖縄、上海へ格安航空会社が毎日、定期便を就航している。高速道を使うと、いわき市中心部からは福島空港より若干遠い、約1時間半の距離だ。観光客の利便性を考慮した多様なアクセスを示すのも、もてなしの一つだろう。(浅倉哲也)

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