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【水位計設定ミス】緊張感持って対応を(10月4日)

 東京電力福島第一原発の1~4号機周辺にある地下水くみ上げ用のサブドレン(井戸)の水位計の設定に誤りがあったと、東電が明らかにした。水位管理という汚染水の漏えい防止の基本がなおざりにされていた事実は、汚染水対策全体への信頼を損ないかねない。水位管理は言うまでもなく廃炉作業の管理体制全般を再点検するべきだ。
 東電によると、水位計の設定ミスが発覚したサブドレン6本のうちの1本で5月に少なくとも8回、水位逆転が生じた。水位差によって高濃度汚染水が建屋外に漏れた可能性があるという。
 汚染水の放射性物質濃度は、原発事故で溶け落ちた核燃料に触れるなどしているため1リットル当たりおおむね1000万ベクレルと極めて高い。いたずらに風評を招かないためにも漏えいの有無の調査を急ぎ、再発防止を含めた対策を強化する必要がある。
 問題発覚後に福島市で開かれた廃炉・汚染水対策福島評議会では、8月にサブドレンの水位低下が発生した段階でなぜ、全ての箇所を確認しなかったのかといった疑問や、東電の管理体制の脆弱[ぜいじゃく]さを危惧する声が相次いだ。
 東電は不手際が明るみに出るたびに謝罪し、調査と再発防止を徹底するとこれまで何度も口にしてきた。信頼回復への努力をいくら重ねても、新たな問題が起きるごとに振り出しに戻る。反省を肝に銘じてきたにもかかわらず、今回の設定ミスはなぜ起きたのか。5カ月間にもわたって気付かなかった原因は何かもきちんと示さなければ理解は得られまい。
 汚染水対策を巡っては、高濃度汚染水の浄化後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水への対応も大きな課題となっている。たとえ法令基準以下に濃度を薄めた処理水の海洋放出が国際的に認められているとしても、漁業者の懸念や不安は消えていない。
 汚染水問題は、どのような方法を選ぶにしても科学的な見地だけでは解決できず、風評対策や安全性に関する正確な情報発信など漁業者や住民、消費者らが安心して受け入れられる取り組みが求められる。その安心感は東電への信頼なくして成り立たない。
 角山茂章県原子力対策監は今後、廃炉を進める上でサブドレンの管理以上に困難な作業が出てくると指摘し、現時点では東電のリスク管理に課題が残るとの認識を示している。一つのミスがトリチウム処理水など他の問題処理の支障にもなりかねないという緊張感をもっと強く持ってもらいたい。(五十嵐稔)

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