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オタネニンジン(10月4日)

 朝もやに包まれた会津坂下町の畑に笑顔が広がった。トラクターが通り過ぎた土の中からオタネニンジンが掘り起こされた。薬用としても重宝される会津の伝統野菜だ。4年前に種を植え、雪深い冬と猛暑の夏を4回ずつ乗り越え、ようやく地上に姿を見せた。
 担い手不足を理由に2012(平成24)年、生産者組織の会津人参農協が解散した。「産地を再興させる」。一人の青年が立ち上がり、就農した。栽培は極めて難しい。4年間、雑草を取り除き、土を見守り続けた。その情熱に作物は応えてくれた。
 収穫作業には東京から約20人の応援団が駆け付けた。青年の挑戦に共感した消費者たちだ。3年前から定期的に畑を訪れては草むしりなどを手伝ってきた。豊かな自然と厚い人情にも触れ、今では全員が会津の大ファンとなった。「私の帰省先は心の古里・会津」と参加者の一人がほほ笑む。
 みんなで育てたオタネニンジンは自慢できるほどの大きさには育たなかったが、愛情はたっぷりと詰まっている。畑からは次世代へつなぐ「種」も採れた。農協の解散から5年。栽培農家数は増加に転じた。産地復興の芽は会津の大地に力強く根を張る。

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