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【移住者回帰の動き】多様な生き方伝えたい(10月7日)

 現役世代の都市部から地方への移住が増える兆候が見え始めている。裏付ける調査分析を、民間の専門家らでつくる「持続可能な地域社会総合研究所」がまとめた。過疎指定を受けた全国市町村の11・7%で、2010(平成22)年からの5年間に、転入者が転出者を上回る「社会増」を達成したという。県内では金山町が3・1%、磐梯町が0・2%の増加率を示し、檜枝岐村は0・0%だが、実質は増えた。
 過疎市町村を取り巻く厳しい状況に変わりはないが、同研究所は「離島や山間地域で明るい兆しが見られる」と分析する。仕事や時間に追われる都会での生活を見直し、自然豊かな地方での暮らしに魅力を感じる人たちが増えているという。ボランティアやNPOに熱心に取り組む若者たちは、お金や物でなく、自分らしい生き方を模索している。価値観が変わりつつあるのかもしれない。県や市町村はこうした動きを敏感に捉えた施策を展開すべきだ。県内の移住者たちの魅力的な生き方を県外に発信し、移住の呼び水としたい。
 こうした動きは県内でも広がっている。県のまとめでは、昨年度の県内への定住・二地域居住者は117世帯で、県が調査を始めた2006年度以降で最多となった。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が年度末に発生した2010年度は72世帯だったが、翌2011年度は31世帯に激減。その後、40世帯台で推移し、2015年度は61世帯だった。
 県内では地域おこし協力隊員をはじめ、40歳代以下の世代が目立つ。農業法人や介護現場で働く人が多い。復興の手伝いをしたいと、浜通りに住居を移した人もいる。阿武隈山地の村に中途採用された首都圏出身の男性職員は、四季折々の美しい自然と人々の温かい人柄が、都会にはない魅力と話す。買い物などの不便さよりも、家族で過ごす時間が多いことに満足している。近所の人たちは子どもの名前を覚えてくれ、地域に守られながら育ててもらっている実感があるという。
 県は11月26日、東京・有楽町の東京交通会館で全県規模の移住相談会を初めて開く。見知らぬ土地での暮らしに不安は付き物だ。それを和らげ背中を押してくれるのは先輩移住者たちの体験談だろう。会場では行政の支援制度をPRするだけでなく、先輩移住者たちの多様な生き方を伝えてほしい。県内で暮らすことの喜びも苦労も、生の声で語ってこそ、移住希望者の心に響く。(鎌田喜之)

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