あぶくま抄・論説

あぶくま抄

  • Check

きのね(10月26日)

 満開の桜並木、その下に集う人々が描かれた壁面がひときわ目を引く。物販・飲食店を併設する富岡町のJR常磐線富岡駅だ。震災から6年半余りを経て再開した。朝夕を中心に復興を担う会社員らが降り立つ。
 かつては100メートルほど南側にあり、駅前はにぎわいを見せた。列車が到着すると高校生や会社員が改札を通った。震災で一変した。津波は住宅や飲食店、商店が並ぶ一帯をのみ込み、ほとんどをなぎ倒した。原発事故で避難区域となり、復旧もままならなかった。「町が消えた」。町民の一人はこう振り返った。
 富岡駅周辺の沿岸部は今、再生に向け着実に歩みを進める。町民有志が出資したホテルも開業した。原発廃炉に携わる事業所などを訪れる多くの人々を迎え入れる。レストランやバーラウンジ、会議室を備え、地域住民も足を運ぶ。復興が進むにつれ、観光客も戻ってくるだろう。
 駅やホテルはさしずめ、さら地に植えられた2本の若木にも映る。駅の物販・飲食店は「KINONE(きのね)」と名付けられた。大地にしっかりと根を張る。駅を中心に新しい町並みができる。豊かな森のように建物が並ぶ町の未来が、みんなの視線の先にある。

カテゴリー:あぶくま抄

あぶくま抄

>>一覧