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デストロイヤーと昭和(11月10日)

 秋の叙勲で旭日双光章を受ける87歳の米国人男性の名前が、内閣府のホームページに載っている。「リチャード・ジョン・ベイヤー(通称ザ・デストロイヤー)」とある。昭和の頃、お茶の間を沸かせた白覆面のプロレスラーだ。
 受章理由として「わが国のスポーツ界の発展および日本・アメリカ合衆国間の友好親善に寄与」とあった。現役時代から、米国のアマチュアレスリングや水泳の選手を日本に派遣するなどし、青少年交流に尽くしてきた。そんな取り組みが評価された。
 レスラーは旅芸人のようだ。各地を巡って興行に出場するから、県内にも足跡が残る。最も古い記録は54年前の1963(昭和38)年11月だ。福島市で観客を大興奮させた。1974年11月には同市の会場近くで火災を発見し、民家からの家財道具の運び出しを手伝った。
 テレビの娯楽番組でも人気を集めたが、元々は悪役である。演出だったことは言わずもがなだが、卑怯[ひきょう]な反則攻撃で観客や視聴者の感情をあおった。覆面を鮮血に染め「教育上好ましくない」という批判も受けた。それなのに叙勲とは、政府も随分と粋なことをする。日本国民に愛されていたのだ。

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