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謙虚、丁寧とは真逆な首相(11月12日)

 政治取材の現場にいたころ、こんな自民党の国会議員がいた。党の政務調査会の部会で決めたり、了承したりしたことを、真っ先に関係ある自治体の首長や業界のトップに連絡するのである。
 選挙区に関連する問題がテーマになる時はもちろん自ら出席し、複数の部会にまたがる場合は秘書を動員して情報を集める。新聞は扱わない程度の話でも、関係者にとっては大事なことがあるから「速報」を受けた方は喜ぶ。
 自分がいかに尽力したかを印象付けて伝えれば「先生はよく面倒みてくれている」という評価になるのだという。与党議員の特権の一つだった。
 自民党の部会は政府の省ごとにつくられている。例えば農林部会や水産部会は農水省、国土交通部会は国交省を所管という具合で、政府提出の法案は部会の承認を得ないと国会に提出できない。議員が政策決定に深く関与できるシステムになっている。
 政府与党は一体という原則の下、事実上の事前審査である。各省の法案や政令に不満があれば修正も可能なのだ。安倍晋三首相になり「官邸主導」色が濃くなってはいるが、基本構造は変わっていない。
 こうした流れで予算案や法案が閣議決定を経て国会にかけられ、野党の質問には首相や閣僚が政府与党を代表して答弁する。この国会審議について、自民党は質疑時間の割り振りを議席数に応じて見直す姿勢を打ち出し、野党の猛反発を受けている。
 言い出したのは安倍首相。衆院選で勝利し「われわれの発言内容にも国民が注目している。(質問の)機会をきちんと確保していこう」と提起したという。
 現在、予算委員会などでの質問時間は野党が7、8割、与党が2、3割という大体の配分が慣習化している。これを議席比に直すと、与党が審議時間の7割を占めてしまう。野党が反発するのは当たり前である。
 第一、与党議員は政策決定過程に関わり了承しているから、政府の対応や判断を持ち上げるだけの質問が多い。予算委員会で見られる通りである。割当時間をもてあまし「般若心経」を唱えた自民党議員もいた。
 政策決定に関与できない野党に質疑時間を重点配分するという慣例は当然のことなのだ。おかしな問題を追及する。政府与党とは違った視点から問題を指摘し、修正を迫るなどは野党の役割である。
 安倍政権では集団的自衛権の行使を容認した安全保障関連法、「共謀罪」法で数々の問題点を指摘されながら、数で押し切ってきた。さらに野党質問を削減し与党を増やしたら国会が「翼賛の場」になりかねない。首相には森友・加計問題の追及をかわしたい思惑があるように見える。選挙直後に述べた「謙虚に」「丁寧に」という言葉とは真逆の動きである。(国分俊英 元共同通信社編集局長、本宮市出身)

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