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急がば回れ(11月19日)

 「授業にならなくて困った」。県内のある大学の先生がぼやいた。ざわついて講義の進行が妨げられたのではない。学生は真剣に机に視線を落としているように見えるが、その先は手元のスマートフォンだ。焦りの色も見える。
 たまらず学生の一人に聞いてみた。就職に向けた企業の就業体験(インターンシップ)を申し込んでいるという。受け付けは先着順。締め切り時間が講義と重なった上、希望者が集中して一向に受け付けられないと困り顔だ。「困惑したのはこっちだ」。先生は苦笑した。
 企業側は就職活動の初期段階といえるインターンシップの在り方に知恵を絞る。トップとの会食、普段は立ち入れない中枢施設の見学の機会を設けたり、レポートにこと細かに寸評を添えて返送したりと、有為な人材を得るために必死だ。「予算は数年前と比べて倍加した。優秀な学生はまさに『人財』です」。大手企業の採用担当者は言っていた。
 就職活動を略して「就活」と呼ぶようになって久しい。とかく昨今は短縮形がもてはやされる。だが、どうだろう。実際の仕事はそうやすやすと短縮できるものではない。「急がば回れ」。先達の言葉は短くとも重い。

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