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杜に鎮まる施設(11月21日)

 海辺から「杜[もり]に鎮[しず]まる施設」へ-。東日本大震災の津波で37人が犠牲になった南相馬市の介護老人保健施設「ヨッシーランド」が、6年8カ月の時を経て新天地に再建された。12月1日に開所する。
 震災当時、海岸から約2キロの場所にあった施設を巨大津波がのみ込んだ。職員と入所者は余震が続く中、近くの体育館に避難を始めていたが、全員が移動する前に津波が到達してしまう。施設利用者の様子を見に行った職員はいまだに発見されていない。多くの犠牲を出し、壊滅した施設復活は不可能とさえ思われた。
 震災から1年後、廃虚となった現場で鎮魂祭を挙行した。犠牲者一人一人の名前を呼び上げ、花火を打ち上げた。「いつか必ず復活させる」。関係者は心に誓った。翌月には「ヨッシーランド復興プロジェクトチーム」が発足する。新用地の取得、大規模林野の開発と除染、造成など多くの困難を一つずつ乗り越えてきた。
 新施設は旧施設から約6キロ西側の林の中にある。まだ、克服すべき課題は多い。それでも、震災から立ち上がろうとする熱い思いが形となって実を結んだ意義は大きい。新たな息吹が「杜」の中でさらに育つことを願う。

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