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対北朝鮮 戦いのゴールは?(11月26日)

 先日、ある民放の番組で、北朝鮮の軍隊は上官が下士官を殴り、下士官が兵隊たちを殴るような厳しい体制にあると報じ、出演していた人みんなが驚いていた。しかし、私はそれは戦前の日本の軍隊とそっくりだと思った。客観的に、冷静に考えれば勝てるはずがない対米戦争に、私たち国民を「勝てる」と信じ込ませて戦わせた当時の政府のやり方も、今の北朝鮮とそっくりだ。
 それでふと考えたのだが、もし1945(昭和20)年の8月15日に日本が無条件降伏しなかったら、参戦したソ連軍も日本に進駐してきただろう。そして朝鮮半島の悲劇のように日本は東西に分けられたかもしれない。もし、その東西が今の朝鮮半島のように対立せざるを得ない立場に追い込まれ、例えば西日本の軍隊が米軍と組んで、東日本の周りで銃口を私たちに向けて大規模な演習を繰り返す。東日本の私たちはいつも生命の危険におびえ、東日本軍も有効な対抗手段を考えざるを得なくなるだろう。それが現在の北朝鮮の核やミサイルの開発ではないだろうか。
 現在の状態をこのように考えてみると、北朝鮮側が対話に応じる条件の最初に、米韓あるいは米日韓の軍事練習をやめてくれと言っているのは納得がいく。
 トランプ米大統領は今月20日、北朝鮮を「テロ支援国家」に指定し、安倍晋三首相はいつものようにすぐに「歓迎し、支持する」と述べた。
 しかし、こうして繰り返し制裁を加え、もはや最終段階をにおわせるように圧力を強めて、北朝鮮が対話に応じるとは到底思えない。これまでも制裁を強めるたびに北朝鮮はそれに対抗して核実験やミサイル発射を繰り返してきたのだから。
 それよりも北朝鮮が要求しているように、まずは軍事演習をやめることである。
 私が疑問に思っているのは、米国は最終的に、北朝鮮に核やミサイルを全廃させるまで攻撃を続けるということなのだろうか。北朝鮮側は核の保有を認めさせることは絶対条件としているのだが…。それを力ずくで押さえ込もうというのだろうか。
 いわば米国対北朝鮮の戦いはゴールがはっきりしないし、そこまでの道筋も見えない。この段階までくれば、ただ制裁や圧力を加えるだけでなく対話のための環境づくりを具体的に進めることが必要だろう。口先では対話の用意があるとはいうものの、実際には有り余る軍事力を広げ、全く譲歩するどころか、その手を強めながらでは、北朝鮮としても交渉に乗るわけにはいかないだろう。
 この行く先の見えない戦いになぜ日本は加担し、よく分からない警報におびえたりしなければならないのか。日本の立ち位置も冷静に検討し、対話の道へ導くべきだろう。(小島美子 国立歴史民俗博物館名誉教授、福島市出身)

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