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【いわき湯本温泉】多彩な連携で再生を(12月6日)

 東日本大震災後、観光客数の回復が遅れるいわき市で、いわき湯本温泉の再生が注目されている。市はこのほど、地元のまちづくり団体とともに、震災前に策定した常磐湯本地区まちづくり計画を見直した。温泉と「フラ」の文化の融合による魅力創出や、街なかへのにぎわいづくりの拠点整備などが柱だ。実現に向けて住民や事業者の参加を促し、協力者らとも連携して活気を取り戻してほしい。
 いわき市は海や温泉、出土した恐竜の化石や常磐炭田などに代表される歴史・文化を背景にした観光が主要産業の一つだ。市民生活の面で震災からの復旧は進んでいるが、東京電力福島第一原発事故が人や物の動きにも重い影響を与え続けている。市によると震災前年に約760万人だった市内の観光客数は昨年が7割の回復で、いわき湯本温泉は5割にとどまっている。
 改訂されたまちづくり計画では、地域文化としての温泉とフラの活用を掲げた。旅館の女将[おかみ]らが着物姿でフラを踊る「フラ女将」の活動が知られている。さらに、フラをイメージした服装の普及や温泉とフラに親しむ行事などを企画する。広く住民に理解を求め、地域挙げての取り組みとなるよう期待したい。
 空き地・空き店舗が目立つ中心街のにぎわいづくりも課題だ。JR湯本駅前の老朽化した市営団地を廃止し、跡地などを活用した集客拠点整備を検討している。単にハコモノを造るのではなく、市民と観光客の交流にも目を向け、商店や観光施設と連動してにぎわう空間形成を望む。
 活性化には地元以外から支援してくれる人々の力も頼りにすればよい。中でも若者の発想や意見を取り入れてほしい。いわき明星大では昨年から教養学部の履修で、学生がいわき湯本温泉の活性化策に取り組んだ。PR動画やスマートフォンで利用する案内サイトを作成した。東京の昭和女子大からも研究班の学生が訪れ、会員制交流サイト(SNS)で発信する街歩きや新商品のアイデアを提案した。地元の若者も刺激を受け、自らもっと動こうとしている。
 まちづくり計画を進める団体は、近くに本拠地を置き、サッカーのJ1入りを目指すいわきFCとの連携も視野に入れる。スポーツと温泉療養を結び付け、外国人観光客も意識した健康医療温泉を売り込みたい考えだ。いわきFCが構想を練る国際試合が可能なスタジアムの誘致にも名乗りを上げるという。地域資源を再編し、新たな風を取り込む魅力の向上策が再生の鍵を握りそうだ。(浅倉哲也)

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