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【イノベ推進】問われる政策立案能力(12月13日)

 浜通り地方の復興政策の柱である福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想推進に向け、県が新たな補助制度の検討を始めた。現地で研究開発に取り組む大学や企業向けの施策で、新産業集積の呼び水にしたいようだが、中途半端な感じが否めない。構想と地元を結び付けるには、もっと抜本的な対策が必要だ。
 補助制度は県内の市町村や民間団体と連携し、ロボットや小型無人機「ドローン」、廃炉、再生可能エネルギーなどの研究や技術開発を進める大学・企業が対象になる見通しだ。県は研究・開発が一過性に終わらないよう浜通り地方への出先機関の設置を呼び掛けるという。若手技術者や学生の県内定着の受け皿にしたいようだ。
 廃炉に向けた研究開発の中核を担う日本原子力研究開発機構(JAEA)は、既に浜通り地方の4カ所に廃炉国際共同研究センターや楢葉遠隔技術開発センターなど新たな拠点を設けている。ただ、関連する産業集積の足取りは鈍い。大学も拠点を構えているものの、研究者や学生の定着というには程遠い。現状を鑑みれば、県の新たな施策も期待薄と言わざるを得ない。
 イノベーション・コースト構想には「つなぎの施策」が不可欠だと小欄でたびたび指摘してきた。素晴らしい構想も地元との関わり方や、地域の再生・復興にいかに資するかを具体的にイメージできないと事業意欲は湧いてこないだろう。さらに構想の実現には相応の時間が必要で、その間も地域社会は維持していかねばならない。
 例えば、相双地方に大学を新設し、構想で想定されている技術の研究開発と、新たな技術を人口減などに伴う被災地の諸課題の解決に結び付ける役割を与えてはどうか。復興庁の有識者検討会は産業創出に向け、人材育成の必要性を指摘している。大学が事業イメージを具体化し、高度な技術者や専門家を育成することにより、構想実現の素地が整うだろう。
 相双地方の市町村では人口減と少子高齢化が急激に進み、地域を支える人材の育成・確保が大きな課題となっている。将来を見据え、教育環境の充実を復興施策の中核に据える市町村が目立ってきた。大学が地元をはじめ県内外から教員や若者を受け入れれば、産業が集積する前から地元経済や地域社会にさまざまな波及効果をもたらすのではないか。「夢と現実」「未来と今」をいかにつなぐのか。国、県の政策立案能力が問われている。(早川正也)

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