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ひこうき雲(12月17日)

 車いすに乗った、おかっぱ頭の少女が見つめる。あどけない表情が少しはにかみ、気恥ずかしそうに映る。福島市で開催中のアニメーション画家山本二三[にぞう]さんの作品展に飾られている一枚だ。
 モデルは、1998(平成10)年に交通事故で亡くなった福島市の女子高生。大好きなアニメ「天空の城ラピュタ」の美術監督である山本さんに小学生の時からファンレターを出し、交流が始まった。山本さんは自らの絵画展の案内状を送り、少女の死を知った。がくぜんとして筆を執る。遺族から借りた写真を基に、思いを込めて生前の姿を描いた。
 「天空」と言えば、歌手松任谷由実さんの「ひこうき雲」を思い出す。子どものころの友人の死を歌ったとされる。♪空に憧れて 空をかけてゆく あの子の命はひこうき雲-。大空を見上げれば、どこかに懐かしい人が現れる。切ない歌の響きは、聴く人の胸にそう語り掛けてくる。
 師走の空はどこまでも澄み切り、県都からは雪をかぶった吾妻や安達太良のまぶしい山並みが望める。「福島に生まれて本当に良かった」。そう実感できる季節だ。事故で逝った少女もきっと、大空から古里のパノラマを楽しんでいるだろう。

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